人生からイヤなことをなくすことは絶対にできない? 新しい視点で問題に向き合おう

暮らし

2018/6/12

『悩みにふりまわされてしんどいあなたへ』(志村祥瑚・石井遼介/セブン&アイ出版)

 ACT(アクト=アクセプタンス・コミットメント・セラピー)とは、「マインドフルネス」の汎用性を活かし、幸福を実現するための臨床科学である。従来の心理モデルやセラピーは、問題や苦悩に「どう打ち勝つか?」といったものであったが、ACTは問題や苦悩は「生きている以上あってあたり前と受け入れる」「その姿勢こそが変化へのパワーを生む」というものだ。

『悩みにふりまわされてしんどいあなたへ』(志村祥瑚・石井遼介/セブン&アイ出版)は、そのACTのワークを使いながら自分の問題と向き合うための1冊。

 著者は「人生からイヤなことをなくすことは、絶対にできない」と言う。そのかわり、「人生に必ず存在する苦痛と、いい距離感でつきあう」というのがACTの考え方だ。イヤなことがあったとしても、それにとらわれて悩むのではなく、前に進めるようになることが重要なのだ。

 本書にはさまざまなワークが載っているが、ここで本書から「感情にアクセスするエクササイズ」を紹介したい。カラダの感覚を研ぎ澄まして感情を味わうことは、現実を受け止めて自分の気持ちと向き合う上で大切なことだという。以下にご紹介するのは、マインドフルネスのコアの部分を簡単に圧縮したものである。

ステップ1 カラダの感覚を研ぎ澄ます

 たとえば口を大きく横に「イー」と開けて、そのあと「アー」と縦に開けてみる。そうすると顔の筋肉が動いている感触に気がつく。では、まばたきする感覚はどうだろう。次に、手のひらの感覚や、服が体に触れている感覚を感じてみよう。最後に、頭の重さはどうだろう。そのように、意識を向けてみると、普段は無視しているカラダの感覚を感じることができる。

ステップ2 ゆっくり深呼吸する

 まずは、息をゆっくりと吐く。それから吸ってみよう。呼吸をするごとに体の中が膨らんだりしぼんだりするのを感じられる。鼻や口を空気が通る感覚にも気づけるかもしれない。何か思考が出てきてしまったら、吐く息と共に外に流してみる。それからまた呼吸へと意識を戻すこと。

ステップ3 カラダの感覚に、意識を順番に向けていく

 耳の中に入ってくるささいな音に集中してみよう。それから体に触れている服の感覚、体の重さも感じてみる。次に、まぶたの裏に見える光を意識する。

 それが終わったら、頭のてっぺんに意識を向け、そこから顔、首、肩、背中…と足先までゆっくりと意識を動かしてみる。

ステップ4 素敵な気持ちを味わってみる

 最後に、過去の素晴らしい体験を思い出してみよう。そのときどんな服を着てどんな姿でいるのかなど、事細かに感覚を味わう。「嬉しい」という感覚を体全体で感じ取ってみる。しばらくのあいだ、それに意識を向けてみよう。他にも「嬉しい」ときの体験を思い出したなら、それも一から味わってみよう。

「うまくできなかった」という人も大丈夫。これは、できたかどうかではなく、「行動すること」「プロセスを体験すること」が大切なエクササイズなのだ。本書には他にも、自分自身や問題に向き合えるさまざまなエクササイズが載っている。なにか悩みがあって落ち込んでいるという方にはぜひ手にとってみてほしい。

文=ジョセート