恋愛女子必読の「あたしレストラン」ってなに!? 蒼井ブルーが綴る“エモい日常”に癒される人々が続出中!

エンタメ

2018/6/16

『ピースフル権化』(蒼井ブルー/KADOKAWA)

「エモい」という言葉をご存じだろうか? エモーショナル(感情的、情緒的)から転じ、欧米では元々、エモーショナル・ハードコアというパンク音楽にまつわる言葉(emo=イーモウ)だったが、現在の日本では、「言葉ではうまく表現できないけど、なんか心が揺さぶられる」といった心情を示す言葉として使われている。
 例えば、「蒼井さんはかなり、“エモい。”です!」。これは、女優の飯豊まりえさんが、文筆家・写真家の蒼井ブルー氏の著書『ピースフル権化』(KADOKAWA)の感想として贈った賛辞。エモいの使用例としては100点満点である。

 蒼井氏は、写真家として活動していた2009年、Twitterにて日々のできごとや気づきを投稿し始める。ときに鋭く、ときにあたたかく、ときにユーモラスに綴られる言葉たちが徐々に評判となり、2015年には初著書となるエッセイ『僕の隣で勝手に幸せになってください』(KADOKAWA)を刊行し、ベストセラーとなった。
 本作『ピースフル権化』でも蒼井氏は、日々の悲喜こもごもを日記形式で綴っている。そんな言葉の数々が、飯豊まりえさん曰く、「エモい。」のだという。筆者も、同感だ。では、筆者がエモく感じた部分を少しだけ、ご紹介していこう。

「あたしレストラン」

 蒼井氏の造語、「あたしレストラン」。男子の夢がぎっしりと詰まったレストランだ。どんなレストランなのか、蒼井氏の言葉を引用しよう。

もしも僕に気になる女子がいたとしたら、料理ができるかどうかは絶対に訊いてみたい項目のひとつだ。仮にいろいろがうまく運び、ふたりが付き合うことになったとして、僕は、彼女が作ったごはんを食べてみたい。男子にとって「彼女が作ったごはんを食べる」は、映画や水族館などへ一緒に出かけることと同じくらいに心躍るデートプランなのだ。
現在交際中の女子の皆さんも、ときどきは彼を「あたしレストラン」に招いてみてはどうだろう。きっと喜ばれるはずだから。
これを機に、彼氏に手料理を振る舞うことを「あたしレストラン」と呼ぶのがはやってほしい。Instagram で「#あたしレストラン」とタグ付けして、幸せの記録を残そう。
できれば買い出しへは一緒に行きたい。ひとつの買い物かごにふたりで商品を入れていく楽しさは、他では得がたいから。イベントはここから始まっているのだ。
(本書より引用)

「牛丼屋で泣くサラリーマン」

 蒼井氏は写真家でもある。写真家やカメラが好きな人というのは、日々のさりげないことでも、ついつい心のシャッターを切り、その一瞬を心に刻もうとする習性がある(たぶん)。
 それはたまたま訪れた、牛丼屋さんでの光景だった。

牛丼チェーンで、向かいに座っていた20代半ばくらいのスーツ男子が、泣きながら牛丼を食べていた。泣くといっても、すーっと涙が流れる程度のものではない。「うっ、うっ」と、まあまあの音量で泣いているのである。
客が数人しかいなかったこともあり、店内は割と静かで、彼の泣き声がバスドラムのようにビートを打つのを、客と従業員たちみんなで聴いた。僕たちは彼のオーディエンスだった。
(本書より引用)

「こんなん、だれでもシャッター切るわ」と突っ込むなかれ。「彼のオーディエンスだった」なんて表現までは、誰にもできることではないのだから。

 こうしたエモい言葉の数々が綴られる本書。プライベートから仕事まで、いろんなテーマが、日常の中から切り取られているのだが、ストーリー的なつながりのあるエピソードとしては、蒼井氏の出会いから始まる恋の行方が、断片的に綴られている。そのハラハラの展開は、ぜひ、本書で読んでいただきたい。

 感じたことを表現するのは、時にむずかしい。そんな感情という不明瞭なものを、言葉を紡いで、言葉にならない言葉をできるだけ明確に表現しようとする蒼井氏。写真という抽象と具象の境界をさ迷い歩く表現者だからこそのエモさが、ギュッと凝縮した一冊だ。

文=町田光