ブレイン・スクイーズ! 寸分の狂いなき、王道ミステリ群!

小説・エッセイ

更新日:2012/3/26

江戸川乱歩全短篇(2) ――本格推理(2)

ハード : PC/iPhone/iPad 発売元 : 筑摩書房
ジャンル: 購入元:電子文庫パブリ
著者名:江戸川乱歩 価格:1,350円

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さて、現代においても大乱歩と称され、ミステリのみならず文壇に多大なる功績を残した、モンスター江戸川乱歩。その数ある短編を選抜、編纂したものが本作であります。乱歩の体臭に満ち満ちた第一集にひき続き、第二集には濃厚な機智と智謀で彩られた作品達が収録されています。

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文学初心者の私なぞは、頭痛が痛い! と4度ほどは叫ばずにはいられませんでした。しばしば作中で登場する「賢明なる読者諸君には既にお分かりだろうが…」というフレーズを、何度我知り顔でやり過ごしたことか。

収録される作品群は以下…

・湖畔亭殺人事件
・鬼
・屋根裏の散歩者
・何者
・月と手袋
・堀越捜査一課長殿
・陰獣

…と、幻奇な発想に満ちた第一集に比べて、本格推理小説に則ったチョイスになっております。短編と言うよりも、中編に近い分量の作品ばかりなのですが、そのせいか、非常に緻密で練りこまれている作品が多く、肉汁がたっぷりと閉じ込められた分厚いステーキ肉ばりの歯応えです。カッチカチです。美味死です。

中でも陰獣は、作品自体もスバラシイものですが、むしろ作者自身の異常性をまざまざと見せつけられる作品でしょう。美人の未亡人とナンヤカンヤでイチャイチャするだけの話と思ったら大間違い。まぁ確かに、イチャイチャするんですけれども、その裏でカチカチと噛み合う歯車の精巧さといったらありません。フェティシズムとミステリを絶妙にブレンドして、その両方をヒョイと一段追い越して、ワー! ビュー! グワァ!
(あまりの衝撃展開に、しょう油とコーラの区別がつかなくなったほどです)
自分の掌上で自分を狂い踊らすような芸当は、畏怖を超えて恐怖すら覚えます。

読み終えて暫しばらくは、乱歩病にかかること必至。用法用量を正しく守ってお使いください。


主人公が覗き魔でも叱らないであげて

悩ましい人妻…。いや、本作は淫獣ではなく陰獣である!

眠らない小五郎もこっそり出てきます