雑談が苦手、うまく電話対応ができない…。発達障害の人のための“人付き合いができる方法”

暮らし

2018/6/22

『発達障害の人のための上手に「人付き合い」ができるようになる本』(吉濱ツトム/実務教育出版)

「大人の発達障害」の文字がしばしば見かけられるようになった。「発達障害」というと、症状がはっきりとしており、明確に「発達障害を持つ人」と分かるような印象があるかもしれないが、実はそうではないらしい。「発達障害」にはかなりの程度の幅があり、診断がつかない軽度の大人が少なからず存在し、普通に社会に溶け込みながら、しかし、生きづらさを感じていることが明らかになりつつある。

 そのような人たちは、たいてい「発達障害」の自覚がない。しかし、次のような共通項がある。例えば、他者に興味が持てない、雑談が苦手、うまく電話対応ができない…。もちろん、これらに当てはまれば軽度以上の発達障害を持っていると断言できるわけではないが、可能性は示唆できる。

『発達障害の人のための上手に「人付き合い」ができるようになる本』(吉濱ツトム/実務教育出版)は、「積極奇異型アスペルガー」という日本人では最も数が少ないといわれる発達障害を持っている著者の書だが、本書には発達障害の人の感じ方や考え方が事細かく書かれている。

 発達障害は、脳の前頭前野にある背内側前頭前野と背外側前頭前野、やる気に関係している基底核や腹側被蓋野、脳梁などの部位の働きが機能不全であることが原因と考えられている。これらの部位が機能不全になると、興味の幅が極端に狭まったり共感する力が弱まったりして他者に興味が持てなくなったり、脳の様々な機能を同時活用する雑談や電話対応が苦手になったりする。

 そして、発達障害の自覚はなくとも、社会や人付き合いに対する苦手意識が生まれる、というのだ。

 本書は、そんな軽度発達障害を持ちながらも、“人付き合いができる方法”をいくつも紹介している。

 例えば、あまりにも他者に興味が持てないケース。この場合は、「挨拶をする」「話している間に笑顔を5回つくる」「ありがとうを必ず言う」などのノルマを自らに課し、日々、訓練を積み重ねていく。時刻表を見るのが好きな人であれば、これらのノルマを達成すれば「時刻表を好きなだけ見てもよい」という報酬を自らに与えるようにする。こういう工夫をすることで、3か月から半年ほどで、他者に興味を持てなくても適度に人付き合いができるようになるようだ。

 雑談が苦手な人は、考え方を改めるとよい。「雑談は自分から話しかける」ものではなく、「聞くフリをしているだけでよい」と考え直す。さらに雑談が得意になるためには、ワーキングメモリー(短期記憶)を鍛える。その方法の一つとしては、次のような取り組みが紹介されている。

頭の中で4桁の数字を同じ2桁で引き続けるという方法です。たとえば4923を17で引き続ける。

 この取り組みは、引く前の数字を数秒覚えていなければならない。数字は紙に書いてはならない。慣れてきたら6桁から3桁を引く、などハードルを上げることで、ワーキングメモリーが鍛えられていく。

 電話対応が苦手な人は、電話対応のマニュアルをたたき込み、さらに一目で分かるマニュアル表を受話器の横に置き、「電話の相手がなにを言うか分からない」という未知の恐怖をやわらげるなどの工夫が効果的だそうだ。

 小さな部分部分の小さな成功で、自己評価は少しずつ高まる。そうすることで、人付き合いの苦手感は、徐々に軽減されていく、と本書は説いている。

文=ルートつつみ