「尻が来る!」って何? こんなの聞いたことない、思わず笑ってしまいそうな「ことわざ」たち

文芸・カルチャー

2018/6/21

『本当にある! 変なことわざ図鑑』(森山晋平:文、角裕美:イラスト/プレジデント社)

 先日、アメリカと北朝鮮の首脳が初めて会談し、関係改善を演出してみせた。しかし合意文書はやや具体性に欠けており、「元の木阿弥になりそう」との意見も出ているようだ。

「元の木阿弥」とはことわざのひとつで、「一時的によくなったものが、また元の状態に戻ること」を指す。よく知られることわざなので、ご存じの向きも多かろう。しかしひとくちに「ことわざ」といっても、時代やテーマなどによって数限りなく存在する。中にはほとんどの人が知らないような、非常に知名度の低いものもたくさんあるのだ。『本当にある! 変なことわざ図鑑』(森山晋平:文、角裕美:イラスト/プレジデント社)では、そういった世にはあまり知られていない「マイナー」なことわざをイラストと共に、おもしろおかしく紹介している。

 ことわざの定義は「昔から言い伝えられる、教訓や風刺を含んだ短い言葉」ということだが、教訓などを含むことが多いため、「偉い人がスピーチとかで使う」というイメージを持つ人もいるだろう。指し示す意味を知っておく必要もあるため、とっつきにくいと思う向きもあるかもしれない。しかし、本書に掲載されている「ことわざ」はそれらとは少々趣が異なる。なんといっても前書きには「テストにも出ないし、仕事にも使えません」と高らかに謳っているのだ。「なんじゃこりゃ!」という感じの、思わず笑えることわざの数々は、偉い人が使う堅苦しい言葉とは違ったイメージを我々に与えてくれるはず。とりあえずは論より証拠、どんなことわざが収録されているか紹介しよう。

変なことわざ その1:「尻が来る」

本書82ページ(森山晋平:文、角裕美:イラスト)

 言葉から絵面を想像するだけで笑えてしまうことわざである。当然、聞いただけでは意味などサッパリ分からないのだが、正しい意味は「責任を負わされる。苦情を持ち込まれる」ということ。表面上の印象以上に、重い内容だった! だが「尻」が「責任」に該当するイメージはなんとなく伝わるかもしれない。「ケツは持つ」と上司にいわれた経験がある人もいると思うが、「ケツ」とは「尻」のことであり、これは上司が「責任はオレが取る」といっているのだ。「尻」には「後ろのほう」「末端」という意味があり、それが「結果責任」へと結びついたのである。とはいえ、いきなり「尻が来る!」と叫ばれても、周囲の大爆笑でその場が終了してしまいそうだ。

変なことわざ その2:「ちょっと来いに油断すな」

本書100ページ(森山晋平:文、角裕美:イラスト)

 これは多くの人がピンとくるのではないだろうか。意味はもちろん「『ちょっと来い』と言われて『ちょっと』で済むことはないから気をつけよう」ということだ。学校でも職場でもそうだろうが、こういう呼ばれかたをした場合、大抵「お小言」を食らう可能性が高い。あまりにあたりまえの状況であるため、ことわざとしての必要性が薄いことがマイナー化してしまった原因なのではと思えてならない。

変なことわざ その3:「待つのが祭り」

本書169ページ(森山晋平:文、角裕美:イラスト)

 一瞬「ダジャレかよ!」と思ってしまいそうである。この意味は「なんでも待っている間が楽しい」ということ。遠足の前日は楽しみで眠れなかったという人も多かろうが、そういう心理といえば分かりやすいだろう。むしろ遠足当日、ドシャ降りで中止になって悲しい思いをした人もいそうである。まあ最後まで楽しめればこれに勝ることはないのだろうが、こういうことわざが存在する時点で、いろいろ察するべきなのかもしれない…。

 このほか、本書には「人を呪わば穴二つ」や「蒔かぬ種は生えぬ」など、聞く人によっては割とメジャーではと思われることわざも入っている。つまるところ、メジャーマイナーに関しても、個々人の感じかた次第といえそうだ。何を後世に伝えたいか、それを考えるうえでも多くのことわざや日本語の言い習わしを知っておくことは、決してムダにはならないはずである。

文=木谷誠