喜びの救急箱ってなに? パラリンピックのメダリストが教える“メンタルの回復術”

暮らし

2018/7/5

『心を休ませるために今日できる5つのこと マイクロ・レジリエンスで明日のエネルギーをチャージする』(ボニー・セント・ジョン、アレン・P・ヘインズ:著、三浦和子:訳/集英社)

 毎日、心身共に疲労困憊している現代人は多い。仕事や家事、育児に忙殺されているとストレスも溜まり、メンタルも回復しにくくなる。そんなときにぜひ読んでほしいのが『心を休ませるために今日できる5つのこと マイクロ・レジリエンスで明日のエネルギーをチャージする』(ボニー・セント・ジョン、アレン・P・ヘインズ:著、三浦和子:訳/集英社)だ。

 著者のボニー氏は義足のスキーヤーとして、1984年のパラリンピックで銀メダルと銅メダルを獲得した女性だ。彼女は女性や障害者のジム通いがまだ珍しかった時代に世間の目を気にせず、ジムで体を鍛え上げ、さらにスキー選手養成校でトップレベルのスキーヤーと切磋琢磨して活躍の場を得てきた。

 そんな半生を持つボニー氏は現在ビジネスコンサルタントとして活動しながら、「マイクロ・レジリエンス」という考え方で、心と体をベストな状態に向けて“微調整”していこうと提唱している。本書にも記されているマイクロ・レジリエンスとは1日を通してごく小さいことを少しずつ変えていき、その人のエネルギーと生産性を高めていく方法のことだ。

■心身の健康を保つためには、大きな変化でなく“微調整”が必要

 心身の健康を保つために意気込んで運動や瞑想、あるいは栄養管理に力を注ぎたくなる方もいるだろう。しかし、こうした「マクロ・レジリエンス」は長期的な習慣化が必要で、即効性がなかなか期待できない。その一方で、マイクロ・レジリエンスはすぐに行うことができ、その即効性も期待できるというのがポイントだ。

 本書ではこのマイクロ・レジリエンスをふだんの生活の中に取り入れるための「5つのテクニック」が説明されている。

(1)脳の使い方を切り替える
(2)原始的な恐怖をリセットする
(3)思考のクセを見直す
(4)体をリフレッシュする
(5)心を活性化する

 本稿では、これらのテクニックの中から特に誰でも実践しやすそうなものを紹介していこう。

■「ゾーン」で区切りを決めて、脳の使い方を切り変えよう

 仕事の効率や質が落ちたと感じ、悩んでいる方に実践してほしいのが、「ゾーンによる切り替え」だ。職場には自覚している以上に集中力を妨げるものが溢れている。そのため、意識的に「集中しやすい環境」を作ることが大切になる。

(1)他人が邪魔できない「空間ゾーン」を設定する
(2)目に見えるシグナルを決め、集中していることを同僚に知らせて邪魔を防ぐ
(3)自分の境界線や期限を伝える
(4)集中するため、電話やメールなど外部との接触をシャットアウトする「時間帯ゾーン」を決める
(5)緊急時以外はメールの通知音や電話の着信音をオフにする。(音を低くするのも可)

 どうだろう、この記事を読みながらでもすぐに取り掛かることができそうだ。しかも、本書が提案するこの対策は、周囲の協力を得ながら行うので、チームワークも築きやすくなるだろう。効率のいい仕事術を探しているビジネスマンはぜひ取り入れて、ひとりで頑張りすぎない脳の使い方を検討してみてほしい。

■自分の心をくすぐる「ジョイキット」を探そう

 ジョイキットとは、自分の心をポジティブにさせてくれる“喜びの救急箱”のことだ。ストレスを抱え、ヘトヘトになりながら毎日を生きていると、ポジティブな姿勢を保つのが難しくなってしまうこともある。そんな時にあなたの心をぱっと明るくしてくれるジョイキットがあれば、メンタルの回復が早くなる。

 ジョイキットは、心に響くものであればなんでもよい。例えば、我が子がよちよち歩きをしたときの写真や親からの温かい手紙、大好きなペットの動画などもおすすめだ。いつでもスマホやタブレット、パソコンでも触れられるよう、デジタルのジョイキットも用意しておくとよい。

 自分なりに発見したジョイキットは常に取り出せるよう手元に置いておけば、落ち込んだときでも前向きなことが連想しやすくなる。自分の気分の浮き沈みになかなか気づけないという人は、あらかじめ仲の良い同僚や家族に、自分の調子が悪そうなときにはジョイキットから何かを出して驚かせてくれるよう頼んでおくのもよいのだそう。

 自分がポジティブな気持ちになれたら、友人や知人にも幸せをおすそ分けしてみたい。相手の好きな食べ物や共通の思い出の写真、マッサージのギフト券などを入れたジョイキットを贈るのだ。貰った相手はさらにアイテムを加え、自分好みのジョイキットを作ることで元気になれる。

 こうしてポジティブの輪が広がっていけば、職場環境や家族仲にも変化が表れるだろう。自分自身が心から前向きになることで、変わる関係性もあるかもしれない。

 現代人には、心の疲労を抱えながらやっとの思いで毎日を生き抜いている人も多いだろう。「もう限界かもしれない」と感じている方は、ぜひ本書のメンタル回復術を利用して、生き方を“微調節”してみてほしい。心身の健康は毎日のちょっとした工夫で守っていけるのだ。

文=古川諭香