ノスタルジックな雰囲気が心地いい、“無限ループ”なファンタジーコミック

公開日:2012/3/14

タビと道づれ (1)

ハード : PC/iPhone/iPad/WindowsPhone/Android 発売元 : マッグガーデン
ジャンル:コミック 購入元:eBookJapan
著者名:たなかのか 価格:400円

※最新の価格はストアでご確認ください。

主人公は15歳の少女・タビ。ある思いを秘めて、学校とは逆の路線に乗る。たどり着いたのは、5年ぶりに訪れる住み慣れた街…のはずが、なんだか不思議ワールドに変わっていた。街が外部から隔絶している。夏の1日が無限ループし、ほとんどの住人の行動も同様にループする。街の移動範囲には、個人個人で制約が設けられている―

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謎解きの進行とともに、主人公や登場人物たちが心に秘めた悩みや迷いが紐解かれていきます。ちなみに、舞台は広島の尾道がモチーフ。

悩み多き青春時代を描く物語で、たびたび用いられる“無限ループ”ですが、よくよく考えてみれば、なるほどと納得できました。

義務教育時代というのは、ほぼ家と学校の往復だけという、同じような毎日の繰り返し。じつは大人になってみれば、学校が会社に置き換わっただけで、繰り返しの毎日は同じだと気づくのですが、子どもにとっては、生きてきた過去よりこれから生きる未来(目安として平均寿命まで)の方が圧倒的に長く、大人より1日が長く感じられます。

それに輪をかけて、義務で強制的に学校に行かざるを得ないものですから、「こんな同じような生活がいつまで続くんだろう」「単調な毎日が永遠に続くのではないか」などと思ってしまっても無理がないのでは。

じつは、多感な青春時代の1日というのは意義深く、本人が「あまり進展のない」「代わり映えのしない」日だと捉えたとしても、見えないところでは大きく進歩があったりして。思い悩む日々の出口が急に現れたりすることは珍しくありません。

青春群像劇において、少年少女たちは“無限ループ”のなかで頭と心をクシャクシャ・クタクタになるまで揉み、心的成長を遂げて、ループから抜けだしていく。青春そのものを表すメタファーが無限ループなのでしょう。

主人公のタビは、これまで何を道づれに旅をしてきたのか。1巻ではナゾが深まるばかりですが、舞台のノスタルジックな雰囲気に浸りつつ、タビの目になって一緒に探し歩いてみてください。


鉄道をモチーフにした「もくじ」。発想がおもしろい

冒頭から印象的なコマ。鉄道網に見えますね

一人、電車に乗ってたどり着いたのは…

「どうやって(この街に)入ってこれた…!?」

街のあちこちに、穴で行けない場所があり…謎解きで物語が進んでいく (C)tanakanoka 2007