赤裸々な本音、生き様、心・魂の叫びがギッシリ詰まった、超歌手・大森靖子の言葉が熱い!

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公開日:2018/7/2

『超歌手』(大森靖子/毎日新聞出版)

 夏といえば、音楽フェス。その良さは、なんといっても多彩な顔ぶれのライブが見られること。フジロックには2016年ノーベル文学賞のボブ・ディラン氏も来るが、個人的には、サザンオールスターズが登場する、ロッキンジャパン2018がやはり熱いかな、と感じている。

 そんなロッキンジャパンで、筆者が会うことを楽しみにしているアーティストのひとりが、初めての単著『超歌手』(毎日新聞出版)を上梓した、超歌手の大森靖子(おおもりせいこ)氏である。

 簡単にプロフィールを紹介しよう。1987年生まれ、愛媛県出身。高卒後に上京し、美大で学ぶ。19歳からインディーズ活動を始め、注目される。2014年にメジャー(エイベックス)契約。得意とする音楽スタイルは、「弾切れも気にせず畳み掛けるように言葉を撃ちまくるジェットコースターみたいな弾き語り」(公式ホームページより)。

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 個性あふれるメロディーラインや型にはまらないパフォーマンスに加え、弾丸となるストレートかつ、日常目線から生まれる歌詞の数々が共感を呼び、ファンを増やしている。

 例えば、ほんのごく一部の紹介だが、こんな歌詞がある。

私は 私よ(「POSITIVE STRESS」)、最高は今 最悪でも幸せでいようね(「オリオン座」)、オレンジジュースに突っこんだ小バエの羽がばたついた 生きるって超せつなかった もう好きじゃなくなったのかな(「エンドレスダンス」)。

 2014年には結婚し、現在、一児の母でもある大森氏。本書は、愛用するアコースティックギター、名器ハミングバード(ギブソン社製)を、ペン(キーボードかも)に持ち替えて描いた、「いわば説明文です。私の。『今』の大森靖子の攻略本です。(まえがきより)」だ。

「今」の大森氏の、心象風景、人生観、世界観、セックス観、音楽観などを一望しつつ、本音、生き様、メッセージ、独白、心・魂の叫びが赤裸々に綴られている。

 では、そんな芸術家、超歌手、女、妻、母、そして個人としての大森靖子がギッシリ詰まった本書より、いくつかの言葉を紹介しよう。

 日常がいちばん大切だよ。生まれたときから死刑だし、常に毎日を手づくりしているんだよ、その積み重ねが人生だ。
(#急にいいやつになったね、どうせいいやつじゃなくなるし より)

 MeTooはやめましょう。人と同じ人生はない。誰かとまったく同じ心もない。だから「私も」は危険だ。
「私の場合は」。「In My Case」をきちんと表現できる人間が増えればいいな。
(#KIMOCHI’ MeTooされたくない より)

 どんなにみんなと違っても、どんなに人間としておかしいと言われても、たったひとつの私の心だから、私だけは抱きしめてあげたい。
(#心 より)

「子供産んだら女は母親っていう生き物に変わる」とかいうクソみたいな幻想は、働きながら子育てすることがもっともっと当たり前のこととして認められて尊厳を守っていくべき世代のために今すぐブチ殺したいですね。
(#クソババになっても水着着たい より)

 孤独だからこそ、自由がある。じゃないと、なんとなくみんなが言うことに合わせていきていくしかできないですから。
(#孤独力 より)

 つーか眼球がどう考えても足らないんだよ、今の世の中を把握するのに。とっとと進化しろよ肉体。視点が足りねえんだよ。
(#テレビと自撮りどっちがリアルか より)

 クズのまま光るんだよ。自分の理想の自分になるの待つほどの時間は、人生にはないんだから。
(#光 より)

 私は、絵を描くように歌をうたいたい。声も、詞も。
(#歌を描く より)

 とにかくスペシャルじゃなくたって、超好きだったり、超越したかったりすれば「超○○」って名乗ればいいと思うんですよ。
(#超歌手 より)

 死ぬまでに何か成し遂げたいとか、(中略)、そんなゆっくり生きてらんないわけ。今この瞬間死んでも後悔しない選択をしつづけないとどっかでブチって死ぬのね。すべての瞬間に生まれるものが尊いはずなんだよ、人生は総合点ではないはずなんだよ。
(永遠の帰結 あとがき より)

 エッセイスタイルの随所でキラキラときらめく言葉たち。読む人の分だけ違った輝きを発見するだろう。超歌手 大森靖子について深く知りたい人はもちろん、自分を受け止め、迷わず自分の人生を歩みたいと願うすべての人たちの背中もグイっと押してくれる、力強くソウルフルな1冊だ。

文=ソラアキラ