上司のパワハラで病気に… 知っておきたい「サラリーマン護身術」!

ビジネス

公開日:2018/7/5

『9割の会社はバカ』(石原壮一郎・三矢晃子/飛鳥新社)

「働き方改革」の必要性が巷で叫ばれるようになってから久しい。すでに多くの企業でコンプライアンスが徹底されていたり、残業をあまりさせないような社風になってきたりと大きな変化が巻き起こってきていることは確かだ。

 しかし、それでも一部の企業はいまだに昔の体質から抜け出せずにいる。つまり、依然として会社において理不尽な残業などで、過労鬱を発症したり過労死してしまったりするリスクがあるということだ。

 ここで考えてみたいのだが、「働き方改革」が標榜されているにもかかわらず、なぜいまだにこのようなブラックな事態が発生してしまうのだろうか。最近でいえば日大アメフト事件やモリカケ(森友学園・加計学園)問題、電通の過労死事件に注目すればわかることだが、日本社会には「上には逆らえない」体質がいまだに残っていることがその要因のひとつになっているといえそうだ。

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 このような事態に対処するためのバイブルのようなものをひとつ手元に携えておきたいもの。そこで今回は会社での理不尽の解決、職場で心身ともに疲弊してしまったときの対処法、会社に騙されないために知っておくべきことなどをまとめた書籍をみなさんに紹介したい。それは『9割の会社はバカ』(石原壮一郎・三矢晃子/飛鳥新社)だ。

 いささか挑発的なタイトルだが、その中には特定社労士である三矢氏のコメントなども掲載されており、とてもためになる。本書を通じて、実際には会社側よりも従業員・労働者のほうが制度という名の分厚い壁に守られており、何も怖くはないのだということをみなさんに知ってほしい。

■上司のパワハラがあまりにひどい。いっそ辞めてしまおうか…

 企業に勤める少なくない数の人が経験したことのあろう上司からのパワハラ。それがあまりにもひどい場合、みなさんはどのような態度を取りどのような行動にでるだろうか。次の中から選んでみてほしい。


1.自分のメンタルを守るために、これ以上は関わらずさっさと辞める
2.上司を徹底的に挑発し、わざと暴力をふるわせて警察に訴える
3.辞める気があるなら、開き直ってその上司に立ち向かってみる

 パワハラが上司の個人的なものであれば、3が正解だろう。会社ぐるみのものであれば1の選択肢を視野に入れていても差し支えないという。特定社労士の三矢氏によれば2はなかなかうまくいかないようだ。上司ひとりの暴力を会社全体でもみ消そうとしたり期待通りに動かない警察にイラついたりして無駄に体力・精神をすり減らしてしまうだけになってしまうかもしれない。

 会社は嫌いじゃないけど上司のパワハラには耐えられないという場合に気づいてほしいのは、「上司はいずれ交代する」ということ。そうすれば、会社の相談窓口に持ちかけることで人事異動で案外あっさり解決する可能性もある。

 一方で、会社を辞める決心がついている場合には毅然とした態度で上司に立ち向かうのがおすすめだという。納得のいかない指示には説明を求め、暴言は録音するなどして公的な機関に報告をするのも有効な手立てだ。下位の公的機関が動いてくれないようであれば、親方である厚労省などの上位機関に訴えてみるのもひとつの手だという。

お役所は完全にタテ社会ですから、上位機関から『こんな問い合わせがあったけど、どうなってるんだ』といわれたら、下っ端は慌てて対応するはず。あまりおおっぴらに宣伝していませんが、各都道府県にある総務省の行政評価事務所に連絡するのも有効です

 このように「役所をうまく使う」という発想を持つだけで、日本の勤め人は劇的に働きやすくなるというのが本書のスタンスだ。

■クビを言い渡されたら従うべきか?

 ソリの合わない上司からもっともらしい口実をつけてクビを宣告された。こんなときみなさんはどうするだろうか。


1.「解雇は納得できません」と告げて、今までどおり仕事する
2.労働局や弁護士に相談して会社に「解雇の無効」を認めさせる
3.30日分の解雇予告手当をもらって、さっさと別の仕事を探す

 会社に残りたい意思があるなら、もっとも妥当なのは1だ。上のような場合、普段の仕事ぶりや過去に起こしたトラブルなどが「口実」にされることが多いようだ。だが、解雇をめぐる日本の法律はきわめて会社側に厳しく、会社に巨額の損害を与えたなど、よほどのことでなければ正当な解雇理由にはならない。にもかかわらず、こうした事態ではつい萎縮してしまい、「辞め損」をしている勤め人があまりに多いのだという。

 辞めたくなければ、解雇予告手当を受け取ってはいけません。受け取ったら、解雇を了承したことになってしまいます。私物もそのままで、今までどおり仕事を続けましょう。それでも会社がしつこく言って来たら、あくまで冷静に解雇理由の説明を求めます。こっそり録音しておいたほうがいいでしょうね。「そんな理由で解雇できるんですか?」とトボケて聞いてみたら、不当解雇を証明する証言は簡単に集まると思いますよ

 ここまで2つの事例について本書に即して説明してきた。本書にはこれ以外にも実にさまざまな事例と、それに対する著者による適切なアドバイスが掲載されている。それは会社でのささいなできごとから法律・制度にかかわるものまで幅広い。本書をわきに携えて会社員生活を充実したものにしたいものだ。

文=ムラカミ ハヤト