がさつな先輩と“ツンギレ女子”の甘々な日常。同人作家の妄想がバズって単行本化!『先輩がうざい後輩の話』

マンガ・アニメ

2018/7/3

『先輩がうざい後輩の話』(しろまんた/一迅社)

 電子書籍、というか紙媒体の雑誌連載ではなくWebサイト連載のマンガ作品は、近年すっかり当たり前の存在となった。またマンガ雑誌からプロデビューするのではなく、同人活動で人気を得てから商業作家としてデビューするケースも増えているようで、SNSに投稿した作品がバズりまくり、そのまま商業作品としてリリースされるといったケースも最近は目につくようになっている。

 代表的な例としては『こぐまのケーキ屋さん』(カメントツ/小学館)、『おじさまと猫』(桜井海/スクウェア・エニックス)、『戦国コミケ』(横山了一/KADOKAWA)などがあるが、いずれもTwitterやpixivなどのSNS投稿から火が付き単行本化となっている。そして例示した3作品の作者はいずれも商業デビュー済みのプロ作家であったが、完全なるアマチュア、同人作家としての投稿から一気に商業デビューを果たしたのが『先輩がうざい後輩の話』(一迅社)の作者・しろまんただ。

 新社会人として勤め始めた“ちっこい女子”の五十嵐双葉は、入社初日に無精髭を生やしたがさつな巨漢・武田に「社会見学の中学生」と間違えられ、激怒。しかし五十嵐の教育役となった武田は、がさつだしデリカシーに欠けつつも面倒見は良く、いつも五十嵐の頭をがしがしと撫でつつ、何かと世話を焼いてくる。そんな“うざい先輩”を持った後輩・五十嵐ちゃんの、恋愛一歩手前の甘アマな日常を描いた作品だ。

 初単行本のあとがきでは、お絵かき好きな同人作家が「こんなの読みたい」と思いついた設定をそのまま描いてSNSにUPしたところ、1日で大量のRTが付き……と、一気にバズった経緯も説明されている。一旦描いたはいいが照れもあり投稿を躊躇するも、知り合い作家に相談したら「いいじゃん」の一言で投稿を決意、なんて裏話もあり、ファンとしては「よくぞそこで背中を押してくれた!」とナイスアドバイスに“いいね”したくなるはずだ。

 一般的な商業作品との違いとして、基本的に単行本に収録されている各話は、すでにSNSにUPされているものであり、修正や着色などがあるとはいえ内容的には既読作である。また現在でも読もうと思えば、無料で読むことだってできる。しかし本作のファンは、改めて単行本を購入しているようだ。こうした流れも近年の特徴で、Webで読んだが紙の本として手元に置きたい、描き下ろしや修正部分をしっかり読みたいといった需要、そして「作者へのおひねり感覚」で既読作品であろうが購入するのだ。

 また出版社側から見れば、投稿された各話には万単位のRTが付いており、つまりはファンの数が可視化されているため作品のプッシュもしやすい。雑誌不況の折でもあるが、雑誌連載という過程をすっ飛ばして単行本化できるという点もメリットだし、作者、ファン、出版社の“三方良し”な状況が生まれ始めている。

 さて、現在もSNS投稿が続けられている本作は、第1巻以降のお話もかなりの数がUP済み。(おそらく刊行されるはずの)第2巻以降に収録されるであろう展開では、デリカシーのない武田のセクハラ発言(「胸無いよな」など)にブチ切れたり、かと思えば自宅で映画デートを敢行したり、面倒くさいじいちゃんが乱入してきたりと、相変わらず五十嵐ちゃんの周辺は騒がしい。また、五十嵐&武田を生暖かく見守る同僚、風間&桜井も何やらいい感じに……と、気になる展開が続いている。

 本書で萌えたなら、まずは作者のTwitter&pixivアカウントをフォローすべし。そして次の新作UPと次巻以降の発刊を待とう。読んでニヤついたなら、RTも忘れずに! そのワンクリックが新たな読者を呼び込む宣伝活動にもなるのだから。

文=佐藤圭亮