“負のスパイラル”から脱出するには「まず変えるべきは外見!」なワケ

暮らし

公開日:2018/7/10

『未来を変える「外見戦略」』(川園樹/KADOKAWA)

「何をやっても上手くいかない……」という状況に陥ってしまったことは、誰しもあるだろう。
 国際イメージコンサルタントとして10年間、国政選挙から海外の要人、上場企業経営者、芸能人、スポーツ選手、起業家など、3000人以上の見た目を変えてきた川園樹氏の著書に、全てが上手くいかない時は、「まず外見を変えるべき」と書いてある。その理由とは?

■外見は「状態」を変える

 結果が出るまでには「状態」→「行動」→「結果」という流れがあります。現在の「状態」が次の「行動」を決め、その「行動」によって「結果」が決まります。

 例えば、ある生命保険の営業の方がいたとします。彼はここ数ヶ月間、契約が取れていません。営業所に戻るたびに所長に怒られる日々が続いています。そんな「状態」で営業活動を続けています。
 想像してみてください。数ヶ月間まったく売れない営業の方は、どのような外見でしょうか。どのような服装、表情、立ち居振る舞いをしているでしょうか。例えば、着古したスーツに身を包み、暗い顔、うつむき加減で立っている。そんな「状態」かもしれません。

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「状態→行動→結果」という流れで考えると、営業の方の次の「行動」や「結果」は、着古したスーツ、暗い顔、うつむき加減という「状態」から引き出されます。つまり次の訪問先でも「売れない状態」から引き出された「行動」をとりますから、よい「結果」が出る可能性は低くなります。
 この論法でいくと、この営業の方はこれからもずっと売れないことになります。

 つまり、悪い「状態」が、悪い「行動」を生み、悪い「結果」を引き起こすというマイナスのスパイラルから抜け出すことはできないでしょう。
 多くの方は「結果」を変えるために「行動」を変えます。新しい営業ノウハウを学び、それに合わせた「行動」をとります。しかし、「状態→行動→結果」という流れを考えれば、真っ先に変えるべきなのは「状態」なのです。

「状態」を変えるには外見を変えることです。
 まずは、まったく売れない営業の方の容姿を想像してみてください。
 次に、常に成績が一番のトップの営業の方の容姿を想像してみてください。顔つき、しぐさ、背筋の伸び方、立ち姿など、いろいろなところに違いがあるはずです。声のトーンや話し方まで違いがあるのではないでしょうか? 外見を変えることで「状態」を変えることができます。「状態」が変わるとそれに連動し、「行動」、「結果」も変わってきます。非常にシンプルな考え方ですが効果は絶大です。

 私の知人のある男性は、普段の生活ではボタンを掛け違え、シャツの襟や袖がうっすらと汚れていてどことなくだらしない印象です。しかし、趣味の茶道をする時は、袴を身につけ、真っ白な足袋をはき、まるで別人のような威厳を感じさせます。これは服装が内面に及ぼす影響の大きさを表しています。

■外見は「事実」を変える

 外見とは「情報です」
「情報」とはその伝わり方によって「事実」の伝わり方が変わります。
「情報」の伝わり方とそれによって受ける印象について、心理学者ソロモン・アッシュが印象形成論で唱えた「初頭効果」という考え方があります。印象形成の過程において、最初に与えられた情報が、後の情報に大きく影響を及ぼす心理効果のことです。

 例えばAさんを紹介する時に、

【パターン1】
「Aさんを表すキーワードは、「知的」「明るい」「リーダーシップがある」「時間に少しルーズ」だよ」

【パターン2】
「Aさんを表すキーワードは、「時間に少しルーズ」「知的」「明るい」「リーダーシップがある」だよ」

 と聞かされたらどのように思いますか。

 この2つは伝えている内容の一部の順番が最初か最後かになっているだけですが、【パターン1】と【パターン2】の紹介のされ方では、【パターン1】のほうがより好意的な印象を持たれたのではないでしょうか。

 多くの人が【パターン1】では「Aさんは知的で明るいキャラクターで人から好かれているのだろう。それゆえリーダーシップもあるのだろう。時間にルーズなのは、周りの面倒を見すぎてしまったりするのだろうか」と欠点をも良く解釈し、【パターン2】では「いくら知的で明るくてリーダーシップがあっても、時間にルーズなようにその他の面でもルーズだったりするのではないか」と欠点に引っ張られる解釈をされる方が多い傾向があります。

 この結果からアッシュはこう結論付けています。

「人は、最初に与えられた情報で相手の印象を決めてしまう。その後に入ってくる情報は、この印象に適合するものは素直に受け入れられるが、そうでないものは捨てられるか、適合するように解釈されて、最初の印象に組み込まれていく」

 人は自分が信じたいものを信じる傾向があります。最初に抱いた印象が正しかったと思い込みたがります。また、一度「こういう人」とラベルを貼った瞬間に、「本当にそうなのか」ということを考えることをしなくなりやすく、ラベルを貼った瞬間に、そのものが何であるのか分かったような気になり、まっさらな気持ちで知ろうとしなくなるものです。

 そしてやっかいなことに、最初の良くない印象は覆すのが難しいのです。ニューオーリンズ大学名誉教授のマイケル・ルボーフはそのことについて、人は一度マイナスの印象を持つと、それをプラスに変えるまでに、7〜8回のポジティブな情報を受け取らなくてはならないとしています。誰しも自分の判断は正しいと思いますし、自分の判断を強化する情報を積極的に集めようとするからです。

 人は物を見る時、その情報は目の網膜に投影され、網膜の視細胞が、情報を電気信号に変え、視神経に乗せて脳へ送ります。両目の網膜は各目に左右二系統あります。右視野は左脳、左視野は右脳で感じています。それぞれの情報は視床を通過する時に情報が整理されて大脳皮質の視覚野に送られ、ここで形や色、明るさ、動き、位置などが分析されて、初めて何かを見たと認識されます。

 ただし、相手の目に入った情報すべてが認識される訳ではありません。
 例えば、あなたのことを「注目に値しない」と判断したとします。その場合、たとえ同じ場を共有し、視線があなたに向いていたとしても、あなたの情報は相手の脳には届きません。通勤電車の中で多くの人を見ても、どんな人がいたかは覚えていないでしょう。それと同じで、あなたも風景の一部になる可能性があります。つまりそのような状況では、いくら素晴らしい企画を巧みにプレゼンしたとしても相手には届きません。

「注目に値する」と判断され、あなたの伝えたいことを伝え、望む結果を得るために、最初の情報である外見を変えること、これがあなたの人生の打開策となります。