お嬢様が男前すぎるっ…! 空回りボディーガードとのドタバタラブコメ『お嬢様が護らせてくれない』

マンガ

更新日:2018/7/9

『お嬢様が護らせてくれない』1巻(白崎/一迅社)

 身分違いの恋ほど燃え上がるものはない。pixivで話題の『お嬢様が護らせてくれない』1巻(白崎/一迅社)で描かれるのは、大財閥の御令嬢とボディガードの恋だ。どんな情熱的なラブロマンスが展開するかと思いきや、どうも様子がおかしい。お嬢様がボディガードをお姫様抱っこしている!?

■優しすぎて頑強になってしまったお嬢様

 鬼龍院家の一人娘・一花(いちか)は、可憐な見た目に似合わず腕っぷしが強い。それはもう、立ち向かってきた悪者を一撃で倒してしまうレベル。いさましく戦った後はさわやかにニコリと笑う。同性でも惚れてしまうかっこよさだ。一方、一花のボディガードである雫は、ボディガードの名家に生まれた優秀なサラブレッド。決して弱いわけではないが、一花の頑強さの前では手も足も出ない。むしろ一花の強さにときめき、壁ドンされて頬をポッと染め、「これは恋なのか!?」とモジモジ悩んでいるような乙女な男子である。

 お姫様より王子様に憧れる一花は、その振る舞いも男前だ。お見合い相手にレディファーストさせるのではなく逆にエスコートしてしまい、それがあまりにもスマートなので、男のプライドゲージをどん底まで突き落としてしまう…。ある意味で「天然」とも思える行動だが、すかさず「男前ならではの弊害!」とツッコむ雫の存在が心地いい。

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 なぜ一花はこんなに強くなってしまったのか? それには悲しい過去がある。まだ一花が小さい頃、自分をかばった専属ボディガードが命を落としたことをきっかけに、自分が強くなることを決心したのだった。後任のボディガードとしてやってきたのが雫だ。父親は仕事で忙しく、母親は旅好きで家を空けることが多い一花にとって、本当の気持ちを知ってくれているのは雫だけ。それ以来、雫は一花の心の支えであり、「心」を護るボディガード。一花だって心の奥底は乙女なのである。

■この恋は一方通行?

 注目したいのは、一花への恋心を意識するようになってからの雫の行動だ。母親が旅先から戻り、レストランで一花とゆっくり過ごしている時、ある者が襲撃してくる。雫は正しい判断と勇気ある行動で、母親と一花の両方を無事に護ることに成功した。恋の力が雫を強くしたのだ。普段は冷静な雫がこのときばかりは熱くなり、男らしさをいかんなく発揮する姿に、キュンとせずにはいられない。

「雫がわたしをまもったことを誇れるように 一花はすごくりっぱに生きますね」
「雫が生まれていろんな辛いことも乗り越えて 今の雫になって 私に出会ってくれてありがとうございます」

 雫の人生を丸ごと受け止めて尊敬してくれる一花。けれど彼女は、どんな相手にも失礼のない振る舞いをする高貴な精神の持ち主だ。雫だけに特別な想いを持っているかどうかは、まだわからない。……いや、純粋すぎるがゆえに自分の本心に気づいていないのか? 本作で描かれるのは身分違いの恋だけれど、燃え上がるようなラブロマンスではなく、小さな火が灯り始めたばかりのかわいい恋物語だ。一花のかっこよさにときめきながら、いつしか雫の恋心を応援している。始まったばかりのこの恋を、あたたかい気持ちで見守りたい。

文=吉田有希