雑誌休刊は悲しむべきじゃない?――本格化する電子版への移行

アニメ・マンガ

2018/7/9

休刊相次ぐマンガ雑誌

 今年に入ってからも名の知れた雑誌の休刊が相次いでいる。3月には芳文社の『まんがタイムジャンボ』が、5月には白泉社の『別冊花とゆめ』、幻冬舎の『月刊バーズ』が休刊を発表した。

『まんがタイムジャンボ』は1995年創刊、4コマ漫画の読者層をファミリー層から青年層まで拡げ、『レーカン!』などアニメ化された作品も擁していた。『別冊花とゆめ』は1977年創刊、『パタリロ!』『ガラスの仮面』などビッグタイトルが連載されてきた伝統ある雑誌だ。『月刊バーズ』も1986年創刊(創刊時の誌名はコミックバーガー)以来、『ローゼンメイデン』『ヘタリア』『このはな綺譚』などのメディアミックス作品を次々と生み出してきている。休刊のニュースを聞いて驚いた読者も多いはずだ。

 一般社団法人日本雑誌協会の印刷部数公表によると、『別冊花とゆめ』の2017年10月~12月の印刷証明付き発行部数は3万2233部だった。刊行が続いているコミック誌も10万部を超えるものは一部に限られており厳しい状況にある。

(一般社団法人日本雑誌協会の印刷部数公表(男性向けコミック誌・2017年10月~12月)より)

(一般社団法人日本雑誌協会の印刷部数公表(女性向けコミック誌・2017年10月~12月)より)

 単純比較はできないものの、昨年3月に発表されたニールセンの調査によるとマンガアプリ「LINEマンガ」のMAU(月間利用者数)は279万人となっており、「comico」(260万人)、「マンガワン」(247万人)がそれに続く。この200万という数字は、週刊少年ジャンプが昨年5月に200万部を割ったことがニュースになったことも彷彿とさせる。若者を中心にマンガはスマホなどのデジタルデバイスで読むという流れが伝統的な紙のマンガ誌に影響を及ぼしていることは疑いようもない。

雑誌の電子版展開に新たな可能性

 これまで雑誌の「休刊」といえば、実質その雑誌の終了が意味され、復刊の望みも非常に小さなものだった。しかしここのところの「休刊」はその意味合いが変わってきていると筆者は感じている。

 休刊を発表した『別冊花とゆめ』は、秋にWeb版のマンガ誌を新創刊することを予告している。コミックバーズも、Web版「デンシバーズ」を展開中だ。

 上記マンガアプリランキングでも、IT系企業が目立つ中に、小学館が展開する「マンガワン」、集英社の「少年ジャンプ+」など出版社が展開する雑誌連動型アプリが安定した地位を築いている。逆に、オリジナルマンガの無料購読を武器にダウンロード数、ユーザー数を伸ばしてきたIT系企業が展開してきた新興マンガアプリは、出版社のような編集機能を十分には備えていないこともあり、断続的に人気を維持したり、メディアミックス展開で読者を増やしたりといった取り組みに苦慮しているという話も聞こえてくる。

 つまり、ウェブ・ソーシャルメディアの活用の勘所を学んだ出版社が、紙から電子への移行を積極的に進め、ヒトやカネといったリソースのデジタルへの集約が本格化しつつある、というのが現状ではないだろうか。「マンガワン」や、白泉社の展開する「マンガPark」のように、複数の雑誌に掲載されていた作品を集約、横断的に「期間限定無料」としたり、有料コインを使って読み進める仕組みを整えたり、と先行するオリジナルマンガ系アプリと比較しても仕組みとしては遜色ない状況になってきている。出版社・編集部にとっても、ほぼリアルタイムに人気度合いがランキングや販売状況で把握できるのは、紙の雑誌にはなかったメリットになっているはずだ。

 マンガ雑誌は、人気作家の人気作品を基盤としながら、新人作家の発掘と育成を行ったり、編集者が読者の反応と向き合ったりしながら、企画を世に問う場として貴重な存在だった。単に作品をデジタル化するのではなく、雑誌が持っていたこれらの「機能」がウェブ・ソーシャルメディア・アプリに展開されることが、多様なマンガが生まれるためにも欠かせない。

 そんな中、「休刊」という言葉が持つかつての負のイメージを、私たち読者も改めた方がいいのかも知れない。出版業界の取り扱い上はたしかに「休刊」ではあるのだけれど、デジタルへの期待を込めた新しい言葉が必要ではないかと最近考えはじめている。ちなみにFacebookで友人・知人に問いかけたところ、「転生」「リニューアル」あるいはストレートに「電子化」などたくさんの案が寄せられた。雑誌の果たしてきた役割やその魅力を若い世代に伝えるためにも、何か良い言葉が生まれることに期待したい。

文=まつもとあつし