「助けて!ノラが我が家に押し寄せてくる…!」野良猫とのコミカルな日常を描いた斬新な猫漫画

マンガ

公開日:2018/7/8

『飼ってない猫』(関口かんこ/講談社)

 飼い猫と過ごす日常をユーモラスにまとめた猫漫画は、数多くある。しかし、『飼ってない猫』(関口かんこ/講談社)はなぜか家に集まってくる野良猫たちとの日々をコミカルに描いた作品だ。

「助けて!ノラが我が家に押し寄せてくる!」そんな微笑ましい悲鳴をあげている関口氏は生まれて初めて実家を出て、日当たりのいいアパートで新生活を始めたことを機に、個性豊かな野良猫たちとの出会いを果たした。

 野良猫といえば、警戒心が強く、人間に対して簡単に心を許してくれなそうなイメージがある。しかし、関口氏のもとを訪れる野良猫たちはどちらかというと人懐っこい性格の子が多い。

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 例えば、うどんの盗み食いという衝撃のファーストコンタクトを果たした「とん平」(♀)は仕事に勤しむ関口氏の膝に乗りたくてたまらないほどの人間好きだ。膝に乗られないよう、必死に対策を取る関口氏に何とかして甘えようとする光景は、もはや飼い猫と飼い主の攻防戦のようだ。

 さらに、愛情深いとん平は家の中に入れないときは外から30分間鳴き続けて自分の存在をアピールしたり、関口氏の気配を外から追跡したりもしたようで、関口氏は猫相手に居留守を使うハメにもなった。

「『猫なんか呼んでも来ない』と言いますが、近所の野良猫はだいたい呼んだら来てくれる」そう話す関口氏と野良猫たちのやりとりは絶妙な距離感があるからこそ、よりユーモラスに映る。飼っていない猫に懐かれる生活って、なんて羨ましいのだろう…。猫好きの方は本書を手にしたらきっと、関口氏の斬新な猫ライフに嫉妬をしてしまうことだろう。

■意外と人間くさい野良猫たち

 本書のもうひとつの魅力は、野良猫たちの人間くささが楽しめるところにある。例えば、人間やボス猫には決して媚びないツンデレ女子の三毛猫・ミケは世の面食い女子と同じく、イケニャンにめっぽう弱い。

 さらに、ミケは我を忘れて猫の大好物であるまたたびに興奮した後、散乱しヨダレまみれになった段ボールを見て、飲みの席で失敗した翌日のOLのように反省することもあった。

 猫はミステリアスな動物だといわれることも多い。しかし、実際に傍で関わってみると、愛くるしく、人間くささを持ち合わせていることが分かる。それは飼い猫だけでなく、野良猫にも言えることなのだろう。

 日常が少しずつ猫に支配されていく関口氏は猫用おもちゃを買ったり、外出先で猫のことを考えるようになったりと、猫の下僕への道を順調に辿っているようにも見える。彼女が今後もどんなふうに野良猫たちと向き合い、絆を深めていくのか、今から楽しみになってしまう。

文=古川諭香