丸ノ内線と千代田線で始まる“支線直通運転”。都内で「座って通勤」できる駅が新たに出現!

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公開日:2018/7/10

丸ノ内線の本線。6両編成で運用している。2019年度中に方南町駅まで“直通運転”を行う

 筆者の自宅の最寄り駅でもある東京メトロ丸ノ内線方南町駅で、大規模な工事が進んでいる。丸ノ内線は池袋〜荻窪駅間の本線と、途中の中野坂上駅から分岐して方南町駅に至る支線がある。本線が6両編成なのに対し、支線は基本的に3両編成の電車が中野坂上〜方南町駅間を折り返している。これを2019年度中に直通運転とすべく、ホームを伸ばす工事を行なっているのだ。

 東京メトロでは千代田線北綾瀬駅も同じような状況にある。こちらも現在は、本線の終点である綾瀬駅との間を3両編成の電車が往復しているのだが、今年度中に本線への直通運転を予定しており、やはり駅の工事が進んでいる。

 ただし状況はやや異なる。千代田線は北綾瀬駅の先に車両基地があり、綾瀬駅とこの車両基地との間を、朝夕を中心に多くの車両が行き来している。当初は北綾瀬駅はなかったが、住民の要望に応じて開設された。そのため直通運転が始まれば、朝夕のラッシュ時に車両基地から綾瀬まで回送していた車両が北綾瀬始発に変わると予想される。

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 一方の丸ノ内線は、車両基地があるのは方南町のひとつ手前の中野富士見町で、朝夕は中野富士見町始発の本線直通電車がひんぱんにある。つまり支線の方南町駅以外は昔から6両編成が走っていた。ではなぜ方南町駅まで直通運転が伸びるのか。支線の利用者が少しずつ増えているのも事実だが、それだけが理由ではない。

■西新宿駅の利用者増で方南町駅に恩恵が…

 丸ノ内線は新宿駅より西側の利用者が少ないことから、新宿駅で折り返す電車がかなりある。ところが近年、西隣の西新宿駅の利用者数が増加してきた。東京メトロが公開している全130駅の乗降人員ランキングでは、2013年度の60位から2017年度は49位にジャンプアップしている。しかし西新宿駅のみならず中野坂上駅にも折り返し施設はない。そこで新宿折り返しの電車を方南町まで延長することになり、6両化が決定したという。

 さらに丸ノ内線では銀座線に続き、新型車両の導入が予定されており、来年2月には最初の編成が走り始める。東京メトロによれば2022 年度までに53 編成 318 両を導入とあるので、すべて6両編成になることが分かる。支線用の3両編成と本線用の6両編成を分けるより、全線統一としたほうが効率的という判断もあったのだろう。

 ちなみに千代田線の北綾瀬支線も、現在使われている3両編成は東西線用として生まれた05系であり、本線の主力となっている16000系とは異なる。両数だけでなく形式も揃えれば運用が楽になる。

綾瀬駅に停車中の北綾瀬行の支線電車。現在は3両編成の運用

 いずれにせよ方南町駅や北綾瀬駅周辺住民にとっては、座ったまま都心まで行ける電車が走り始めるわけで、願ってもない朗報だ。一方で綾瀬駅や新宿駅から始発電車で座って移動していた人は、その機会が減ることになる。

 似たような状況は、首都圏では2013年の東急電鉄東横線と東京メトロ副都心線の直通運転、2015年の上野東京ライン開通でもあった。直通運転開始直後、座って帰宅ができなくなったという不満がニュースなどで見られた。

 ただ鉄道を含めた公共交通が、需要の増減に合わせて路線の延長や廃止を含めたダイヤ改正を行うのは当然のことである。現在の日本は飛び抜けた人口増加がないので、大掛かりな改正は少ないけれど、高度経済成長時代は1年ごとに線路が延びていくようなシーンがあちこちで見られた。

 たとえば丸ノ内線では、1954年に池袋〜御茶ノ水間、2年後に御茶ノ水〜東京間、1957年に東京〜銀座(当時は西銀座)間、翌年に銀座〜霞ヶ関間、1959年に霞ヶ関〜新宿間、1961年に新宿〜南阿佐ヶ谷間と中野坂上〜中野富士見町間が開通し、次の年に全通を果たしている。

 こうした状況下で「座れなくなった」と不満を述べる人はほとんどいなかったはず。時代の変化が着席へのこだわりを生んだと言えそうだ。

 ちなみに方南町駅から西、北綾瀬駅から北に線路が伸びる計画は今のところない。都内で電車で座って移動したい人は両駅に注目すべきではないかと、ひと足先に住民になった筆者は考えている。

文=citrus モビリティジャーナリスト 森口将之