禁断の本棚に手を出したら最後、ダークサイドに落ちまくる『本田鹿の子の本棚』

マンガ・アニメ

2018/7/14

『本田鹿の子の本棚』(佐藤将/リイド社)

 本棚には、その人の趣味嗜好が表れます。なかには、本棚を見られるほうが日記を見られるよりも恥ずかしい、と感じる人もいるはず……。

 現在、無料マンガサイト「リイドカフェ」で連載中の『本田鹿の子の本棚』(佐藤将)は、ある少女の本棚に並ぶ“本”が主役の作品です。

 思春期真っ盛りの娘、鹿の子との会話が減り、娘が何を考えているのかわからない、と悩んでいた父・本田鳩作。そんなある日、仕事からちょっと早く帰宅した鳩作は、娘の部屋に侵入し「娘のことを知る手がかりになるかもしれない」「他人の本棚を見るのは その人のプロファイリングになるという」と言い訳をしながら、禁断の本棚に手を伸ばし、衝撃を受けます。

 なんと、その本棚に収められていたのは、どれもこれもあれもそれも奇妙奇天烈摩訶不思議な「暗黒文学」ばかりだったのです……。

 タイマーで目を覚ますだけでなく、持ち主の貞操を奪い、いろいろな意味で目覚めさせてしまうSF(BL)作品(男谷一発著『目覚まし時計』)や、顔が石川五右衛門に似ていることを苦に、窃盗の常習犯となってしまった男と、周囲からガンタンクと呼ばれていたカウンセラーの出会いを描いた作品(アダム竹中著『ゴエモン&ガンタンク』)など、暗黒文学が次々と登場します。

 なかには、ポ◯モン的世界観を描きながら、江戸川乱歩の『芋虫』を彷彿とさせるラストに衝撃を受ける『ミニモン』や、桃太郎のストーリーに似ていると思ったら、意外な結末を迎える『グレープフルーツ太郎』(尼ヶ崎三太夫)など、多少馴染みのある作品も……。

 と、ここまで鹿の子ちゃんが持っている小説を紹介してきましたが、正直に言ってその魅力をみなさんに伝えきれているのか、自信がありません。文章を生業にしていながらお恥ずかしいかぎり。

 鹿の子の本棚にある小説は、娘の小説を読み耽る父・鳩作が勝手に頭の中で想像した映像ともに楽しむことを、強くおすすめします。

 当初、娘の気持ちを知るために本棚の小説を読み始めた鳩作は、いつの間にか暗黒文学の虜になり、ひとりの暗黒中年へと進化を遂げてしまいました。本田鹿の子の本棚でしか読むことのできない、暗黒文学の世界。一度踏み入れたら抜け出せそうにありません。

文=フクロウたろう