日本の「当たり前」は世界の憧れ!? 年間の落とし物返還総額はなんと27億円

社会

2018/7/10

『世界が感動する日本の「当たり前」』(マンリオ・カデロ/小学館)

「あなたは日本が好きですか?」と聞かれたら私は躊躇なく「好き」と答えるだろう。しかし「では具体的に日本のどこが好き?」と改めて聞かれると少し考えてしまう。安全なところ、街中がきれいなところ、人々が勤勉で親切なところ・・・等々日本の魅力はたくさんある。でもそれって当たり前。敢えて言葉にするほどのことではないのでは?と。

 そんな意識を変えるきっかけを与えてくれる本が『世界が感動する日本の「当たり前」』
(マンリオ・カデロ/小学館)である。「当たり前」のことだからあまり意識しない。でも「当たり前」だと思っているからこそ実はすごい。そう語る「日本人以上に日本への造詣が深い、駐日大使の代表」である著者の主張に少し耳を傾けてみることにしよう。

■日本の「当たり前」が世界ではすばらしい


 日本は「物を置いて、目を離しても盗られることはほとんどない」上に「落とした物も戻ってくる」希少な国だ、と著者は語っている。そしてこれは世界の他の国から見れば驚嘆すべきことである、とも。警視庁によると「2016年に都内で落とし物として届けられた現金は36億7000万円に上り、4分の3にあたる27億円が持ち主に返還された」そうだ。確かにこれは諸外国からすれば驚くべき数字だろう。

 けれども「落とした物が戻ってくる」のは日本では決してそれほど珍しくないこと、いわば「当たり前」。他にも銃規制の徹底や国民が参加できる宮中の文化行事があるなど、世界から見るとすごい!と思えることが日本では「当たり前」。

 そしてそれを皆が「当たり前」と思っていること自体がさらにすばらしいのだ、ということを本書は改めて認識させてくれる。素直に日本ってやっぱりいいな、と思わせてくれるのが本書の魅力のひとつだろう。

■「当たり前」のすばらしさをさらに増やしていこう

 さて昨今、多くの新興アジア諸国が日本よりも安い労働力で日本と同程度の良質な製品を安価に生産することができるようになっているのは周知の事実だろう。これにより日本はもはや工業製品のトップ輸出国ではなくなってしまった。では日本は今後、どのような姿を目指すべきなのだろうか?

 そのひとつの解として著者は観光面やビジネス面における外国人の受け入れ、具体的にはビザの緩和などを考える必要があるのでは、と提言している。特に観光業の振興は国内の多くの産業に広く恩恵があるため、観光業を日本の新たな「当たり前」にしては?というのが著者の主張である。

 日本の魅力をさらにアピールしていくための観光業とはどういうものか、外国人はすごい!と思うが日本にとっては「当たり前」な観光業とはどういったものか、を日本に滞在している外交官という特別な立場から提言しているので、興味深く読み進めることができる。 

 本書には、駐日大使という立場から見た国際情勢とその中における日本の立ち位置、過去の歴史と現在の日韓・日中関係などについて、外交のエキスパートならではの視点で論じられている。日本の「当たり前」と世界の「当たり前」には大きな差があることを知ったうえで世界で行動すべき、といった提言は、外交論としてもなかなか読み応えがあるだろう。

 日本は世界からどのように見られているのだろう?という軽い気持ちで本書を手に取ったが、私たちが生活する日本について今一度深く考えるきっかけとなったことは間違いない。

文=ナカタク