久しぶりに再会した先生は「淫らな吸血鬼」でした――。男子高校生と“自称吸血鬼”のエロティックラブミステリーが開幕

マンガ

更新日:2018/7/17

『淫らな君に咬まれたい』(真昼てく/白泉社)

 久しぶりに再会した人が、予想もつかないような変貌を遂げていたら――。それが憧れの存在、ずっと想いを寄せていた存在であればあるほど、胸に秘めた恋心は行く宛もなくさまよい、痛みを覚えるだろう。もっと早く再会していれば、なにかが違っていたかもしれない。そんな風に自分自身を責めてしまうこともあるかもしれない。そして、その人に一体なにが起こったのか、その原因を探りたくなるはずだ。

 6月29日(金)に第1巻が発売されたばかりの『淫らな君に咬まれたい』(真昼てく/白泉社)は、まさに「好きな人の変貌」をテーマにした、エロティックなラブストーリーである。

 本作は「好きな人に振り向いてほしい」という一心で受験勉強に励み、見事志望校に合格した男子高校生・アツシが主人公。彼が再会を願っていたのは、通っていた塾で講師を務めていた〈ちづる〉だ。そして、そのちづるの変貌ぶりに、アツシは慌てふためくこととなる。

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 久しぶりに再会した憧れの先生は、なんと、吸血鬼になってしまっていたのだ。

 その事実をにわかには受け入れられないアツシ。そもそも、現実世界に吸血鬼など存在しない。しかし、年齢を重ねても変わらない容姿、日光を苦手とする様子、血を見るとドキドキして興奮する姿、そのどれもが吸血鬼の特徴。それを兼ね備えたちづるは、本当に吸血鬼なのかもしれない……。アツシは戸惑いつつも、ちづるとの距離を少しずつ縮めていくことになる。

 現時点では、ちづるが本当に吸血鬼になってしまったのかどうかは明かされない。彼女はあくまでも“自称吸血鬼”だ。しかし、時折挿入される、謎の男性との想い出や、血を舐め取るシーン、そして、近隣住人がちづるに向ける冷たい眼差しから、なにか事件が起きたことだけは確信できる。読者はその断片とともに、ちづるが背負っている秘密を追いかけることになる。そう、本作はミステリーとしての側面も持った作品なのだ。

 また、「吸血鬼モノ」にはお約束の、エロティックな展開も散りばめられている。特に、ちづるがアツシの首筋から血を吸うシーンは、非常にセクシーで美しい。そこにあるのは、ふたりだけが閉じ込められてしまった静謐な世界だ。

 もちろん、そんな美しい描写だけではなく、読者を楽しませるラッキースケベ的な展開も盛りだくさん。しかしながら、決して一線を越えようとはしないふたりの姿に悶々としてしまうかもしれない。

 一体、ちづるの身になにが起きてしまったのか。そして、もしも彼女が本当に吸血鬼だったとしたら。それでもアツシは想いを貫くことができるのだろうか。謎に満ちた物語とともに、彼の真っ直ぐな想いの行き先をぜひ見届けてもらいたい。

文=五十嵐 大