大学生男女と犬と先生。推理劇にすると…

小説・エッセイ

公開日:2012/3/16

ソロモンの犬

ハード : PC/iPhone/iPad/WindowsPhone/Android 発売元 : 文藝春秋
ジャンル:小説・エッセイ 購入元:eBookJapan
著者名:道尾秀介 価格:420円

※最新の価格はストアでご確認ください。

初めて読む作家。なんとなくタイトルに惹かれて購入。
「ソロモンの犬」なんてとてもミステリアスで語呂がよくって、海外題材のドラマかな? 大河ものかな? などと作品についても、作家についてもまるで無知のままの購入。時々こういう風に冒険してみるのも、安い電子書籍ならではの手軽さで悪くありません。

advertisement

物語は相模原周辺が舞台。
ぱっとしないけど誠実さがにじみ出るの主人公の純情さが最初は読者を捕らえます。大学生ならではの惚れたはれた。駆け引きがあるようでないような、だれもが一度は通る道。女の子とはつきあったこともない主人公秋内がこだわる、智佳のしぐさや言葉遣い。そんな描写にほんわりな気持ちになっていたところに、突然、事故発生。犬の散歩をしていた小学生の陽介が飼い犬のオービーに引っぱられる形で交通事故に。登場人物の中で最も無垢でなんの落ち度もない小学生の事故死で場面は急展開してゆきます。

うきうきなキャンパスライフは一転、秋内の捜査劇が開始。小学生の親でシングルマザー、秋内たちの教授でもある椎崎先生の過去がどうやらキーに。動物を沢山飼っている間宮という変わった先生のとぼけた味が、スパイスとなり謎解きのきっかけとなりながら、事件は思いがけない方向へ。秋内の親友といいながらも謎の多い京也。その彼女ひろこは智佳の親友。やや、会話文が説明じみているきらいがあるものの、事故死がきっかけとなって、それぞれの過去や性癖が明らかになってきます。

登場人物間のつながりも、地域的にも相当に限定されている舞台設定で、それぞれの関係性が結構濃厚です。一体、事故に見えていたあの現場に何が起こったのか? 平塚市の殺人事件とソロモンの物語は、そうとうかけ離れているようにも見えますが、作者はきちんと決着をつけてくれますのでご安心を。、この文庫の字が小さく、ページに入っている量が多いので、iPhoneでは少々読みづらい難点を除けば、さらりと読める1冊。


言い出したいのに言えない場面。こういうシチュエーションってむずむずします

子供を亡くして失意の椎崎先生はとうとう…でもこれにも事件の香りが? (C)Shusuke Michio 2012