元受刑者が女子刑務所での生活を赤裸々に語る! 人気海外ドラマのリアルな原作本

文芸・カルチャー

2018/7/15

『オレンジ・イズ・ニュー・ブラック 女子刑務所での13ヵ月』(パイパー・カーマン:著、村井理子:訳、安達眞弓:訳/駒草出版)

 Netflixでオリジナルドラマとして製作され、エミー賞の受賞やゴールデングローブ賞へのノミネートなど、大きな話題となった『オレンジ・イズ・ニュー・ブラック』。日本ではシーズン5までが配信されており、ドラマの公式アカウントの発表によれば、シーズン6は7月下旬に配信開始となる。ご覧になったことがある方も多いと思うが、この毎回濃いエピソードが詰まったドラマの原作が実話であることをご存じだろうか?

 原作は『オレンジ・イズ・ニュー・ブラック 女子刑務所での13ヵ月』(パイパー・カーマン:著、村井理子:訳、安達眞弓:訳/駒草出版)。著者のパイパー・カーマンは、アメリカの中流階級で育った白人女性。若気の至りで麻薬取引に加担してしまい、連邦刑務所での15カ月の懲役を言い渡される。判決が出るまでに時間がかかり、罪を犯してから10年以上が経過した2004年2月から刑務所生活がスタート。本書では、その時の経験が綴られている。

■きっかけは、フレンチブルドッグ似のノラ・ジャンセンとの出会い

 パイパーは教育熱心な家庭で育ち、親戚には医者や弁護士が多い。地元のマサチューセッツ州ノーサンプトンにあるスミス大学で演劇を勉強している時に、後に彼女の人生を大きく狂わせる人物に出会う。ハスキーボイスで、茶色い髪をモップのようにカールさせ、小柄で少しフレンチブルドッグに似たノラ・ジャンセンだ。ノラに“デート”に誘われた時に麻薬取引のことを打ち明けられ、粘り強い誘いに負けて、自らも犯罪に加担してしまう。この頃は、ノラとかなり“親密”な関係だったが、服役中に憎悪を募らせ、保釈の少し前に再会した時には「顔をトイレに沈め、溺れさせるぞ」と脅すまでに…。

■それなりの自由はあるけど、理不尽なことが満載の刑務所生活

 著者が実際に収監されていただけあり、本書では刑務所の内情が詳細までリアルで赤裸々に描かれている。映画やドラマを観て、「アメリカの刑務所は日本よりも囚人の自由度が高そう」という印象は抱いていたが、本書の描写からもそれ同様の印象を受けた。ただ、自由度が高いことが、必ずしも良いこととは限らないけれど。

 例えばロシア人のポップ(ドラマではレッド)は、キッチンのボスとして君臨し、絶対的な地位を得ている。禁制品だって入手できるし、彼女に気に入られれば、不味い食事が多い刑務所でも、美味しいものにありつける。しかし、ある程度の自由はあっても、シャワーからは水しか出なかったり、看守にセクハラをされたり、誰かの使用済みの下着を与えられたり(洗濯もしていない!)。理不尽なことを挙げればキリがないのが刑務所生活だ。

■塀の中で実感する周りの人の支えと愛

 判決が下った時、パイパーには婚約者がいた。今まで付き合った人の中で、一番気楽な関係だったラリーだ。2人でニューヨークに移り住み、穏やかな日々を過ごしていたところに警察官が訪ねてくる。婚約者が犯罪者であることをそのとき初めて知ったラリーだが、判決が下るまでも服役中も、懸命にパイパーの支えになろうとする。パイパーの母親も何度も足しげく面会に来てくれた。そして、パイパーのもとには、たくさんの手紙と本が届く。親しい人からのものもあれば、友人の友人からのものも。郵便物を受け取るたびに、自分を愛してくれている人がいることを実感し感謝するのだった。許されないことをしてしまっても、見捨てず支えてくれる人がいたからこそ、刑務所生活を乗り切ることができたのだろう。

 ドラマは脚色されておりコメディ要素も多く追加されているが、原作である本書には実体験に基づくリアルな刑務所生活が描かれている。ドラマを観たことがある方なら、ドラマの個性的なキャラクターや印象的なエピソードを思い出しながら楽しめそうだ。まだドラマを観たことがなくても、場面や人物が丁寧に描写されていてイメージしやすい内容となっている。脚色されていなくても、刑務所生活は十分に刺激的なのだ!

文=松澤友子

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