高齢化した日本=オワコンなのか。日本を取り戻すのに必要な「3つの虎」とは?

社会

2018/7/20

『さらば、GG資本主義』(藤野英人/光文社)

 元『LEON』編集長によるシニア向け雑誌『GG』(GGメディア)があることから、『さらば、GG資本主義』(藤野英人/光文社)の「GG」も当然、高齢者=ジジイを意味していて、彼らが金融資産を独占していることへの批判本かと思い手に取った。しかし高齢者そのものを糾弾したいわけではなく、その構造の問題点を指摘したいのだと著者の藤野英人さんは言う。

日本の高齢化問題は、「みんなの成長」を邪魔している

 2015年に総務省は、2014年時点で個人金融資産約1700兆円のうち、60歳代以上が約6割(約1000兆円)を保有していると発表している。仮想通貨がブームになる前なので現在とは状況が違うかもしれないが、それでも高齢世帯が若者世帯よりも豊かな金融資産を保有しているのは事実だろう。さらに同書の中で藤野さんは、

日本企業の社長の平均年齢は59.5歳(2017年時点)で、90年以降に比べて平均年齢が5歳高くなっていること

その年齢構成を見ると60歳以降が全体の半分を占めていて、かつ女性社長の割合が7.69%だから、会社の半分近くが「還暦を過ぎた男性」により動かされていること

消費シェアに占める(2015年)30~39歳の割合は9.9%、29歳以下に至ってはわずか1.5%なのに対し、60歳以上は47.8%にも上ること

 と、60歳以上が会社も経済も独占していることを説明し、未来を作るはずの若者の姿が見えないことを指摘している。確かに当時40代後半で社長を務める娘が、父である70代の会長と対立した大塚家具や、80代の会長らが58歳の社長(いずれも当時)の退任を要求したセブン-イレブン・ジャパンなど、会社を巡る話題に登場するのは高齢者ばかりだ。藤野さんもセブン-イレブン・ジャパンを例にあげ、

稀代の経営者に対して、あまりにもステレオタイプな表現で気が引けますが、私の頭には「老害」と言う言葉しか浮かびませんでした。

やはり私が懸念している通り、日本の高齢化問題は「みんなの成長」を邪魔しているみたいです。

 と、ため息まで聞こえてきそうな言葉を残している。

日本を取り戻すのに必要な「3つの虎」とは

 では、どうすれば日本の会社はうまくいくのか。答えはシンプルで「若い人に会社を任せればうまくいく」と、藤野さんは言う。

 とはいえ、これまでずっと経営の座や社会の中心にしがみついてきたGG=高齢者たちにお引き取りを願うのは、至難の業だろう。藤野さんも高齢化社会においては

「待っていても順番は回ってこない。だから、チャンスがあれば主導権を奪取しなさい」

 という、元野村證券副社長の斉藤惇さんの言葉を引用している。それは何も社内クーデターを起こすことではなく、「3つの虎」になることなのだそうだ。では、3つの虎とは何か。

・東京などの都市部で起業し、活躍する「ベンチャーの虎」
・地方を引っ張るリーダーである「ヤンキーの虎」
・会社の中で存在感を発揮する「社員の虎」

「ベンチャーの虎」はメルカリの山田進太郎さんやチームラボの猪子寿之さん(ともに現在40歳)などを思い浮かべれば、わかりやすいだろう。「ヤンキーの虎」は地方企業や家業を継いだ2代目・3代目や、仲間と起業する元ヤンキーなどのことを指す。そして第3の「社員の虎」とは

社会を変えるのは、経営者だけではないということです。

会社員でありながら、組織の意向を慮るよりも自分の意思・良心に従い、会社のリソースを使って、顧客のために働く社員。

 のことで、社員の虎になるには、

1.仕事で圧倒的な成果を上げる
2.顧客から信用される
3.会社の中に強力な庇護者がいる

 の3か条が必須だ。しかしこれは下手すると、社内クーデターを起こす以上に難しいのではないか。藤野さんも、

最初からうまくいくとは限りません。むしろ失敗する方が高いでしょう。

 とした上で、

挑戦は、1回で終わらせてはいけません。せめて3回は、フォア・ザ・カスタマー(顧客のために)の発想で動いてみる。

重要なのは、会社を変えることではありません。一歩踏み出すことによって、あなた自身が変わること。

 と語る。

 つまりGG=高齢者から社会と会社を取り戻すには、相手を変えてやろうと意気込むことが重要なのではない。自分の意識を変えていくために何をするのか、何のために働くか、会社は誰のためのもので、誰に奉仕するものかを考えることが大事なのだ。

多世代共生社会の理想は「パーク型」

 同書はGGたちが占拠する社会の構造的問題を浮き彫りにすると同時に、GG=ゴールデン・ジェネレーションである、若者にエールを送る内容にもなっている。そして2つのGGだけではなくすべての年代が輪になり共生していくことこそが、日本の未来を明るくする唯一の方法だというのが、この本の主張だ。

 やみくもに上を目指すのではなく、少子化や地方の衰退、財政難などの課題=穴だらけの社会で、その穴を埋めていくビジネスを考えていく。その上で誰もがゆるく繋がる公園(パーク)のような社会を築くことが、未来のあるべき姿。そのためには、何かをしようと考える若者と、彼らを応援する「イケてるGG」の存在は確かに不可欠だ。

(とはいえそのパークは小ぎれいな大人と優秀な学校に通う子供たちだけの場所では意味がない。個人的には、二層のGGはもちろんのこと、家をなくしてそこで生活している人や泣き通しの赤ちゃん、家に帰りたくない中高生からワケありの大人までが集まり、お互いを排除しない場であってほしいと考えるが……)

 何はともあれ高齢化した日本=もうオワコンではなく、明るい未来を築く余地はまだまだあること、しかしそれは高度成長期と同じものではないこと、そのために誰がどんな思いで仕事に取り組み、それを支えるべきかがわかる。日本を信じている人、絶望している人、その両方にとって気づきが得られる本と言えるだろう。

文=今井 順梨