家なし・職なし・金なしのバツアラサー女性を救うのは…性悪男子高校生!?

マンガ

更新日:2018/7/30

『プロミス・シンデレラ』(橘オレコ/小学館)

 冗談ではなく、恋愛マンガに救われた夜が何度もある。辛い出来事が重なり、身動きがとれなくなってしまった夜、ベッドの中にスマホを持ち込み、そっとダウンロードしたマンガにどれほど助けられてきたことだろう。

 どんな困難が押し寄せても、意志を曲げずまっすぐに前を向くヒロイン。彼女をそばで支える一癖も二癖もあるイケメンヒーロー。個性豊かな友人たち。……現実離れしていると指摘されれば、全くもってその通りなのだが、リアルでは味わえないからこその面白さや胸キュンに、心が高鳴り、明日も頑張ろうと思えるのだから、マンガの力は偉大である。

『プロミス・シンデレラ』(橘オレコ/小学館)も、そんな作品の一つである。著者の橘オレコは、2018年大注目の新人作家で、Twitterフォロワーが16万人を超えるほどの人気。本書が待望の初コミックスとなるのだが、強気なバツイチアラサー女性と金持ち男子高生が同居を始める歳の差ラブコメは、爽快感とドキドキがいい塩梅でマッチしており、目が離せない面白さだ。

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 物語は、平穏な日々を過ごしていた専業主婦の早梅(はやめ)・27歳が、結婚したばかりの夫に不倫され、離婚を切り出されるところから始まる。

 昔から勝ち気で正義感の強い早梅は、二度と夫の顔が見たくないと、貯金30万円とトランク一つを抱えて家を飛び出すのだが、なんと早々に30万の入ったバッグを盗まれてしまう。

 事情があり、頼る人がいない彼女は、無一文で路上生活を送ることになるのだが、そんな生活も限界に近づいた頃、彼女の前に現れたのは、以前失礼な行為をされて、ぶっ飛ばした覚えのある金持ち男子高校生・壱成だった。

 壱成は「ついてこいブス」と言うと、早梅を自身とお手伝いの吉寅(よしとら)が暮らす屋敷に招き入れ、一部屋貸してやると告げる。

 だがその対価として、壱成があらゆるミッションを提案する「リアル人生ゲーム」を持ちかけるのだが――!?

 家族も家もお金も失った27歳の早梅と、歴史ある旅館の社長令息だが、意地悪でひねくれ者の高校生・壱成のちょっと変わった同居生活。

 その中で、「高級クラブで主役に恥をかかせ20万獲得」「富士丘の廃墟で写真撮影」など、早梅に散々なミッションを課す壱成だが、彼を利用して家族に近づこうとするモデルをギャフンと言わせた彼女を見て、急速に惹かれていく様子はとても可愛くて、胸キュンが止まらない。

 誰を相手にしても物怖じせず、言うべきことはキッチリ言う早梅の格好良さと、へそ曲がりのイケメン高校生・壱成の個性が存分に活かされたパワフルでスイートな展開に魅了され、すっかり骨抜きにされてしまった。

 きっと明日も頑張れると力が湧いてくるマンガである。ぜひ読んでみてほしい。

文=さゆ