仕事がうまくいくと人生が楽しい。自分の「働く」を考えるバイブル

ビジネス

公開日:2018/7/30

『働き方の哲学 360度の視点で仕事を考える』(村山 昇/ディスカヴァー・トゥエンティワン)

 ビジネスパーソンにとって、人生の多くの時間を費やして向き合う「仕事」。それだけに、どんな仕事をするのか、どんな働き方をするのかは重要だ。好きで選んだ仕事でも、日々のモチベーションが上がらないときには、「このままでいいのか」と深刻に悩むこともある。

 そんな際に、知っておけば働くことにまつわる悩みが軽くなり、仕事への意欲が高まる知恵があるとすれば、知りたいと思う人は多いだろう。

 そんな悩める人におススメしたいのが『働き方の哲学 360度の視点で仕事を考える』(村山 昇/ディスカヴァー・トゥエンティワン)だ。著者の村山氏は働くことをテーマにした研修会社を起し16年のキャリアをもつ。

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 タイトルにある360度の視点とは、働き方を、仕事、キャリア、成長、リーダーシップ、会社、メンタルを6つのパートから考えること。この6つはそのまま、本書の章構成にもなっている。ちなみに本書は、気になったパートから読み始めてOKなので、気軽に読むことができる。

 こうした本書の第一の特徴は、1つのキーワードを見開きで学ぶこと。著者が紹介するキーワードは、価値創造回路、偶発性理論、πの字思考プロセス、セレンディピティ、内発的動機、レジリエンス他、聞きなじみのない言葉が並ぶ。

 でも、ご安心を。内容説明とイラスト・図解がセットの見開き構成になっているため、わかりやすく、内容がどんどん頭に入ってくるしくみだ。

 もうひとつの特徴は、著者のアドバイスを名言の数々が補足してくれること。

 たとえば、成長の章では、「人生の特性を決定するのは、日常の小さな事柄であって、偉大な行動ではない。カール・ヒルティ」や、リーダーシップの章では、「状況? 状況とは何か? 状況とは私がつくるものだ。ナポレオン」などが登場する。こうした先人・著名人(哲学者、経済&経営学者、心理学者、経営者、作家、詩人、スポーツマンなど)たちからの知恵が随所にちりばめられており、理解を深めるサポートをしてくれるのだ。

 筆者が特に耳の痛い思いをしたのは、パート2「主体性・成長」での著者のこんな指摘である。

忙しさに追い立てられ雑多な仕事をしているとそこそこの知識とスキルが身につきそれで仕事をやった気になる(後略)

 忙しい割には、ふと気づくと、大した実績も残せず、達成感も成長も得られていない、そんな経験はないだろうか?

 本書には、忙しさを人生にとって「実りある忙しさ」に変える処方箋などもしっかりと記されているので、気になった方はぜひ、本書から学んでほしい。

 そして、本書全体を通して著者が重視しているのが、「観(=ものの見方・とらえ方)」である。

 遭遇する出来事や環境をどうとらえるかが、まさに「観」だ。この観をうまくコントロールすることが、仕事の質を高め自分の力を発揮できる基礎となるという。

 著者は、「高い専門知識・技能を持っていても、『観』がぜい弱でうまくキャリアを進んでいけない人」「刺激的な仕事をしているのに『観』が不健全なために、やる気をなくす人」などをたくさん見てきたという。

 一方で、「健やかな仕事観」は「健やかな仕事意欲」を生み、「健やかな仕事人生」につながるという。そうした「健やかな観」をつくるのが、本書の目的なのだ。

「働くこと」=生き方につながることを教えてくれる本書。働くことを通して人生を考えたい人、すべてにおすすめしたい。

文=水野矩美加