「私、1年間だけW不倫しました」現役バーテンダーがカウンター越しに見た十人十色な恋の形

恋愛・結婚

2018/8/1

『恋はいつもなにげなく始まってなにげなく終わる。』(幻冬舎)

 自分はこれまでの人生の中で何度恋に落ち、どんな思い出を抱いてきたのだろうか。――そう考えさせてくれるのが、現役バーテンダーの林伸次氏によって書かれた『恋はいつもなにげなく始まってなにげなく終わる。』(幻冬舎)だ。本書には音楽やお酒の知識を交えながら、片思い・両思い・失恋・不倫……といった様々なラブストーリーが端的に記されている。

 林氏は「cakes」スタート以来、常にナンバーワンの人気を得ている人気連載「ワイングラスの向こう側」も手掛けている、恋愛エッセイの名手だ。そんな彼が心を込めてしたためた切ない恋愛小説とは一体、どんな内容なのだろうか。本記事は、数ある収録作品の中でも特に筆者の心に刺さったエピソードを2つご紹介していきたい。

■恋にも季節がある

「恋愛にも季節がある」本書の最初で恋のエピソードを語ったひとりの女性は、こうした言葉で、時間が経つごとに変わっていく恋愛の形を表わしていた。

 例えば、恋愛で一番楽しいのはお互いの気持ちに気づいている春だ。春は両思いだと感じているのに「好き」という2文字が伝えられず、相手の一挙一動にワクワクドキドキしてしまう時期のことだ。

 そして、そんな春はキスを機に終わり、次は夏が来る。お互いの気持ちが一番盛り上がる夏は、抱きしめ方ひとつで相手の気持ちが分かりもして、これ以上ないくらいの幸福感を噛みしめられる季節だ。永遠にこの恋が続いてくれたらいいのに……と願いたくもなるが、多くの恋愛には徐々に秋の気配が訪れ始める。

 秋が来ると、LINEの既読がついているのに返信が来ないなどという悲しい変化が顕著になり、心の距離が彩られ始めていく。離れてしまった心はやがて冬を呼び、恋愛は終わりを迎える。そんな、いずれ消える恋を私たちは何度も繰り返し、きっとこれからも何度だって繰り返していくだろう。

 恋はいつ消えるかも分からない、あやふやなものだ。しかし、本書を読むと、いずれ消えると分かっていても、目の前の恋愛を大切にしていきたいと思えるようになる。大好きな相手との恋に秋が訪れると、自分を守るため、他の人に逃げたくなったり、自分から相手を振ってしまいたくなったりもするだろう。けれど、相手を最後まで愛し抜き、2人で迎える冬もきちんと見届けていくことこそが、“本当の恋愛“なのかもしれない。

 多くの恋愛は、気持ちを伝えられずに春のまま終わってしまう。だからこそ、秋や冬を迎えられたことに自体にも幸せを感じ、さようならの言葉を交わす前まで、がむしゃらに恋をしていてほしい。

■大人の恋の幕引きは自分の手で

 週刊誌に芸能人の不倫スキャンダルが多く掲載されるようになった昨今は、道ならぬ恋への風当たりが強くなってきている。永遠の愛を誓い合った配偶者がいるにもかかわらず、他の人に心が動いてしまうのはもちろんいけないことだ。しかし、人間である以上、秘密の恋に苦しんでしまうこともある。

「これは本物の恋だとお互い確信しました。笑いのポイント、完全に息があった会話、食べる物や飲み物の好み、好きな音楽や作家まで何から何まで同じ気持ちだったんです。セックスどころかまだ手をつないでもいないのに深いところでわかりあえました。この人が運命の人なんだってお互いが感じあっているのがはっきりとわかりました」

 本書の中でW不倫の経験を語った彼女のこの気持ちは、意外に多くの既婚者の心に響くのではないだろうか。恋は突然降ってくるものだからこそ、「家庭を壊すつもりはないけれど、もしも出会う順番が違っていたら、私たちはどんな形になれたのだろうか……」と考えてしまうような相手に出会ってしまう時だってある。

 しかし、そんな道ならぬ恋には、自分の中で折り合いをつけなければならない。実際、彼女の場合は1年間だけ彼と付き合い、お互いの中で恋愛を終わらせることにした。恋には人生を狂わしてしまうほどの恐ろしさもある。そのため、大人の恋は自分の手で幕引きを行わなければいけないのだ。好きだからこそ、相手を恋愛の苦しさから解放してあげることも、ひとつの“永遠の愛の形”なのだと本書は教えてくれた。

 恋愛はいつもなにげなく始まり、なにげなく終わるが、その中には様々なドラマがある。自分の心に住み着いている恋の記憶を呼び起こしてもくれる本書を読んだ後、あなたは誰に逢いたくなるだろうか。

文=古川諭香