「あと3年」で出来ること、やれること

小説・エッセイ

更新日:2012/3/19

終末のフール

ハード : PC/iPhone/iPad 発売元 : 集英社
ジャンル:小説・エッセイ 購入元:電子文庫パブリ
著者名:伊坂幸太郎 価格:648円

※最新の価格はストアでご確認ください。

ごく近い将来、「地球が確実に滅亡する」という事実が発覚したら、人類はどうなるか?
パニック系の小説や映画には良くあるタイプのテーマ。これには既に数百・数千におよぶ物語が示されているのだけど、大別すればハッピーエンドで終わるもの・無情感にあふれるもののどちらか。伊坂幸太郎はこの「終末のフール」で、新たなパターンを打ち出した。

advertisement

8年後に小惑星が降ってきて、人類は滅亡する。そんな確定情報が世に流れる。
暴動・強奪・殺人・パニックなど、あらゆる混乱を繰り返した5年後。残りが3年となったとき、なか平静を取り戻していた街。そこに生きる人びとが、一体何を思い、どう生きていくのか? 仙台郊外の団地を舞台に、そこに住む面々が1話ごとに一人称で心情を語る連作短篇集。

伊坂幸太郎は大好きな作家の一人なのだけど、その著作の中でも個人的に思い入れの一番強い作品がこの「終末のフール」だったりする。とにかく設定がもう絶妙で、コレを思いつくことができる、という事実だけでも賞賛に値する。現実的に考えればリアリティも何もあったもんじゃないのだが、やや乾いた感のある文体で淡々と語られる“事象”は、抜群の説得力を醸し出し、これに伊坂幸太郎独特の言い回しが加わってくるのだから、読んでいるこちらがやられないワケがない。シーンごとに「もし自分がその立場に置かれたら?」を考えずにいられない。とにかく全てがグッとくる。

タイトルやテーマに惑わされることのなきように。終末感や絶望感は一切なく、逆に清々しいまでの爽快感すら感じる。単行本・文庫、そして電子書籍と、あらゆるメディアでこの作品を読んでいるのだけど、読み返すたびに瑞々しい感動が沸いてくるのがすごい。

他の大作と比較すれば地味な印象のある作品だが、間違いなく最高級のファンタジー。意外に多い伊坂幸太郎の引き出し、ぜひ開けてみてほしい。


フォーマットはセッティング自由自在のXMDF形式、UIは相変わらず優秀

目次画面、各章ごとに韻を踏んでいるのが格好良い

冒頭は象徴的な英文横書き画面、バグか狙いか目次とこの画面が無限ループする場合がある

HELP画面はワンタッチで出現、操作方法がかんたんにわかる仕組みになっているのがうれしい

設定で横組み表示にしたところ、伊坂作品の文体は横組みでも違和感が少ない

iPadでフォントを大きめに設定し縦表示に設定、目が疲れそうな時にはこちらのセッティングがオススメ