エリート(変態)社会人と女子高校生の変化球恋愛マンガ、『恋と呼ぶには気持ち悪い』最新刊発売!

マンガ

更新日:2018/8/6

『恋と呼ぶには気持ち悪い』(もぐす/一迅社)

『恋と呼ぶには気持ち悪い』(もぐす/一迅社)は、高収入、高身長、イケメンというハイスペックだけど、女癖最悪の社会人・天草亮(あまくさ・りょう)が、女子高校生の有馬一花(ありま・いちか)を好きになり、「気持ち悪いです」となじられながらも、行き過ぎた猛アプローチをするラブコメ漫画だ。(1巻レビュー)。

 1巻レビューの時にも書いたが、本作はエリート社会人が、ごく普通(ちょいオタクの)女子高生を好きになる……という設定だけを押して、なんかイチャイチャする「うすーい内容」の漫画ではない。エリートだけど人間性に難のあった亮が、本気で人を好きになったことにより、成長して変わっていく様子が「人を好きになるって、いいなぁ」と思わせてくれて、すごく魅力を感じた作品だった。

 その最新5巻が、ついに発売された。相変わらず2人の関係は、亮の「一方通行」。一花は亮の猛烈なアプローチに困ったり、照れたり、可愛い部分を見せたり、ストーカーまがいの行動には、はっきり「やめてください」と拒絶できるしっかり者。だがその関係も、本巻で変化の兆しが……。

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 バレンタインの日、以前より一花を意識していた同級生の多丸(たまる)が、ついに想いを打ち開けるのだ。多丸のことを「オタク仲間」だと思っていた一花は戸惑い、返事は一旦保留ということに。

 一方で、亮にも変化が。彼に好意を寄せる同期の松島有枝(まつしま・ありえ)は、思い切って亮にバレンタインデーのチョコを渡して……。

 ……と、それぞれ新しい恋の波に巻き込まれる一花と亮。最新5巻は、2人の関係が大きく動き出す「始まり」として、見逃せない内容となっている。

 さて、本作の感想として、絶対に書いておかねばならないことが一つある。

 既刊(1~4巻)までは、亮はカッコいいよりもヘンタイ的な部分が目立っていた気がする。もちろん、カッコいいシーンはいっぱいあるのだが、それは花束をプレゼントしたり、一花に一人で夜道を歩かせないように迎えに行ったり、熱烈な愛の言葉を囁いたりと、どちらかというと「表面的なカッコよさ」が多かった。あえて悪い言い方をすると、「女性にモテてきたからこそできる、キザな行動」だ。

 けれど今回は、人として「本当にカッコいい亮」を見られた気がして、図らずも、ときめいてしまった。

 それは多丸に告白されて、悩んでいる一花に言った亮のセリフ。

 事情を知らない亮は、いつもと様子の違う一花を心配して、やや強引に相談に乗ろうとする。しかし一花が「亮さんには関係ない」と突っぱねた時、「一花さんの悩みも、俺のものにしたい」と言うのだが……。「女なんて使い捨て」くらいに考えていた以前の亮なら、絶対に出てこない言葉なんじゃないだろうか。「本気で」恋をしていないと言えないよなぁと。

 一花は「気持ちの押し売り訪問販売ですよ」とやや呆れ気味なのだが、私はこんなことを言ってくれる亮に、さらにそれが、すごく本心が滲み出ている気がして、なんだかとても、ときめいてしまった。

 登場人物全員に好感がもてて、「みんなに幸せになってもらいたい」と温かい気持ちになって、「恋愛っていいなぁ」と思わせてくれる本作、ますます続きが気になるぞ……!

文=雨野裾