夏目漱石への愛を祖父江慎、梅佳代らが表現した『坊ちゃん展』

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更新日:2018/8/10

 「散切り頭を叩いてみれば文明開化の音がする」

 明治時代初期に流行したヘアスタイルをモチーフにし、当時の先進的な人たちを賞賛するのに用いられたというこの歌。教科書で読んだことがあるという人も少なくはないだろう。“平成最後の◯◯”などと巷では盛り上がってもいるが、明治150年にもあたる今年2018年は、各地でそれにちなんだイベントが催されている。

愛媛県松山市で開催中の『坊ちゃん展』

 愛媛県松山市では、地元ゆかりの文豪「夏目漱石」にちなんだアート展が開催中だ。言わずと知れた人気小説『坊ちゃん』を、現代のクリエイターたちが独自の解釈で新しく作ったアートを集める「坊ちゃん展」。2018年6月30 日から9月2日まで愛媛県美術館(松山市)で開催されている。

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坊ちゃんを愛する4人のクリエイター

 参加クリエイターは、道後温泉を中心に展開されているアート・イベント「道後オンセナート2018」に参加している祖父江慎・梅佳代・浅田政志・三沢厚彦の4名だ。書き間違いもそのまま書いてしまうことで漱石の軌跡を表現した無修正版『心』(岩波書店)の出版で知られる祖父江慎が、本展のアートディレクターも担当した。市内の中学校に通う野球少年たちのハツラツとした姿を「坊ちゃんたち」として梅佳代が、漱石の小説内で描かれた名場面やアイテムを「坊ちゃんアイ2018」として浅田政志がそれぞれ写真におさめた。「アニマル」シリーズで知られる彫刻家の三沢厚彦は、猫をモチーフにした新作によって猫好きな漱石への愛を表現している。

祖父江の「部屋本 坊っちやん」ら漱石イベント多数開催

 2016年は漱石の没後100年、2017年が生誕150周年ということで、去年・今年と漱石関連の施設やイベントなども各地で公開・展開されている。祖父江も、「道後オンセナート2018」のホテルプロジェクトで、部屋そのものを一冊の本のように見立てた立体書籍「部屋本 坊っちやん」が2017年9月2日より道後舘で公開されている。この夏は、漱石や彼の生きた明治時代にちなんだイベントを巡礼して”文明開化の音”を聞いてまわるのはいかがだろうか。

文=田中同年代