自分のことを「壁に止まったハエ」と想像するとストレスが軽減?一流の研究機関が認めた『超ストレス解消法』

暮らし

2018/8/9

『超ストレス解消法 イライラが一瞬で消える100の科学的メソッド』(鈴木祐/鉄人社)

 現代人はストレスまみれだ。職場で、家庭で、交友関係で何かしらのストレスを毎日のように抱え、それを上手に吐き出しながら生きている。

 しかしときには溜まりにたまったストレスが心からあふれ出て、どうしようもないときがある。「あーもう!イライラする!」。こんなとき、どうやって解消したらいいだろう。

『超ストレス解消法』(鈴木祐/鉄人社)は、年間5000本の科学論文を読破するサイエンスライター・鈴木祐さんが、本当に効くストレス解消法を紹介する1冊だ。その数、なんと100個!

 本書で紹介されているテクニックすべてがハーバードやスタンフォードなど、一流の研究機関で効果が立証されたものばかり。現代人の救世主のような書籍だ。ありがたい。この本さえあれば、イヤな上司にイビられても「お前なんか怖くないもんね~」と(心の中で)豪語できてしまう……かもしれない。

 まずは本書より、即効性のあるストレス解消法を3つご紹介しよう。

■深呼吸するだけストレスが改善する「ブリーズ・カウンティング」

 怒りを感じたときは、深呼吸をするとよい。こんなことを聞いたことがないだろうか。なんだか迷信のようで信じがたいが、実はこれ、立派なストレス解消法なのだ。

 一般的に人間の体は、不安や怒りを感じると呼吸が荒くなる。これは私たちの祖先が作り上げた人体の防衛システムだ。このときにわざと呼吸を遅くすると、防衛システムに「危険が去った」というシグナルが送られる。完全にストレスが解消されるわけではないが、深呼吸をするだけで確実にストレスが改善されるのだ。

 では、具体的にどう深呼吸すればよいか。本書では10種類以上の呼吸法を紹介しており、この記事では「ブリーズ・カウンティング」をご紹介しよう。実際にやることはこの3つだけだ。

1.リラックスして座り、できるだけゆっくりと鼻から呼吸する
2.息を吐き終わったら、頭の中で「1」とカウントする
3.続いて呼吸を数えていき、「10」までカウントしたら再び「1」から数え直す

 これを1日10分から15分繰り返す。ウィスコンシン大学マディソン校がこの実験を行ったところ、被験者400人のストレスレベルが大きく低下したそうだ。すごい。深呼吸、あなどるべからず。

■嫌な思考をゴミ箱に!「ネガティブ・ダストビン」

 ふと嫌なことが頭をよぎる――。こんなことが日常的に起きている人は「ネガティブ・ダストビン」を試してほしい。

 これも方法は簡単だ。まず「嫌だなぁ」と感じることを、すべて具体的に紙に書き出す。時間は3分ほど。その後、その紙をビリビリに破いて捨てる。これだけだ。

 なぜこの方法がストレスに効くのか。私たちの脳は、考えや感情を紙に書き出すと、あたかも思考がモノになったかのように錯覚する。そしてそれを捨てることで、本当に思考までゴミ箱に放り込んだような気分が生まれるのだ。

■自分を「壁に止まったハエ」と想像するとストレスが軽減?

 他人に激しい怒りを感じたときにぜひ試してほしいテクニックがある。「フライ・オン・ザ・ウォール」だ。その方法は奇妙でヒジョーにシンプル。

 なにかイヤなことが起きたら、自分のことを「壁に止まったハエ」だと想像してみる

 たったこれだけ。しかし、なぜこんな方法がストレス解消法につながるのか。ちょっと自虐的で悲しい。せめてカナブンあたりにならないものか。

 本書によると、自分をハエだと思うことで現在の体験と感情の間に距離感が生まれ、ネガティブな思考に流されにくくなるのだそうだ。

 このためハエのイメージでなくても、「自分を見つめるもう一人の自分」「自分を見つめる空に浮かぶ雲」など、目の前の状況を外側から見られる視点を作ることができると、怒りを抑えられるという。なるほど。じゃあハエじゃなくて、自分のことを「壁に止まった絶世のイケメン」で想像してみようかなぁ……。

■人生をむしばむロングストレスを解消するには?

 ここまで3つの即効ストレス解消法をご紹介した。しかしこれらのテクニックは「対症療法」にすぎない。たとえば対人関係に不安を抱えている人が上記のストレス解消法を繰り返しても、その場のストレスは抑えられるが、人と接する不安は消えない。「なぜ対人関係に不安を抱えるのか」という原因にメスを入れない限り、延々と繰り返してしまう。これではずっとストレスに悩まされ続けることになる。

 本書ではこの慢性的なストレスのことを「ロングストレス」と称している。その人の考え方や思考のクセ、そしてストレスとの向き合い方に問題があるせいで、積もり積もった心の歪みが人生をむしばんでいく。どちらかというと、その人の生き方の問題だ。

 特別ストレスとなる原因がないのに、いつもイライラや不安を抱えている人は、これを見逃していることが多い。本書では、ロングストレスが起きてしまう根本的な原因にメスを入れ、心を解放するテクニックを紹介している。どちらかというと、この内容が本書のメインだ。

 しかし、この方法は根気や手間、そして時間が必要だ。本書ではこの方法をいくつも紹介しているが、どれも根気強く続ける必要性を感じる。この記事では、その中でも手軽で効果があり、まっさきに行うべきストレス解消法「エクスプレッシブ・ライティング」をご紹介して終わりにしたい。

 これは1980年代に生まれた心理療法で、現在でも広く使われているテクニックだ。その方法はとても簡単。

 自分が体験したネガティブな体験について、その時に抱いた感情や思考を包み隠さず書き記す

 たったこれだけなのだが、ポイントが3つある。まず1つ目は、最低4日間は続けること。2つ目は、1日20分は書き続けること。そして3つ目は、慣れたら悩みを展開することだ。仕事で起きたミスを書いたときは、そのミスが自分の未来や過去にどうつながるのか、家族や友人にどう影響するのか、客観的に見つめてみよう。ストレスと向き合い、自分がどのような感情を抱いているのか、自分自身で理解する。これが非常に重要になる。

 私たちは、私たちが思っている以上に自分の感情に疎い。「嫌だなぁ」と感じることも「なぜ」「どのように」「どれだけ」と、具体的に言語化できないことが多い。嫌なことと向き合うことを恐れてその場のストレス解消で無理やり忘れても、脳は忘れていない。徐々に思考と心をむしばんでいく。私たちは、私たちが思っている以上に繊細な存在なのだ。

 ストレスに苛む日々を過ごす方はぜひ本書を読んでほしい。できれば、根気強く自分自身と向き合ってほしい。現代を生きるならば、必ずストレスがついてまわる。決して逃げ切れるものではない。ならば、立ち向かうしかあるまい。

文=いのうえゆきひろ