ビジネスマンにとっての英語力は「話すこと」ではない!? ——本当に必要なのは英文の記事を読めることだった…

ビジネス

公開日:2018/8/13

『ビジネスマンの英語勉強法』(三輪裕範/筑摩書房)

 経済のグローバル化がすすみ、ビジネスパーソンの多くは必要に迫られて英語の勉強をするということが増えているのではないだろうか。そんななかで以下のような声をよく聞く。「大学受験で英語の長文読解の練習をひたすらしたから文章を読むのは得意なんだけど、話すのはどうしても…」。

 ここで気になるのが中高6年間で英語を勉強してきた日本人の本当の英語力だ。『ビジネスマンの英語勉強法』(筑摩書房)の著者である三輪裕範氏は、「読解はできるけど、話せない」のはその人の思い上がりであって、実際には「話せもしないし、読めもしない」のが現状である旨述べている。つまり、日本人ビジネスパーソンの英語力はリーディングですらままならないのである。

 本稿では、先に言及した書籍に即して、ビジネスマンに必要な英語力とは何かということとそれを身につけるための道具をみなさんに紹介したいと思う。

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■会話力を鍛えるよりも先に読解力を鍛えよ!

 日本人は英会話力だけでなく英語の文章を読解する能力も惨憺たるものであることは先に述べたとおりである。英会話力が他のアジア諸国のそれと比べると大幅に劣っていることから、近ごろオーラルコミュニケーション重視の教育が行われるようになったが、このこともまた日本人の英語読解力を大いに低下させている原因になっているのだという。

 それがどのような問題を引き起こしているのか、ビジネスという観点からみてみよう。まず、英語で書かれた文章が読めないということはどういうことか。それは「ニューヨーク・タイムズ」や『タイム』『エコノミスト』などの英語で書かれた経済系の新聞・雑誌が読めないということである。こういった類の新聞・雑誌が読めないということは、取引先と経済界のホットな話題についての会話もままならないということだ。そして、このような新聞・雑誌をろくに読めないと取引相手からなめられるのは言うまでもない。

 要するに、他国の企業と商取引などをする際に直接交渉するための英会話力ももちろん必要なのだが、それ以前に「ニューヨーク・タイムズ」や『タイム』『エコノミスト』などの英語で書かれた経済系の新聞・雑誌の内容を、原語のまま読んできちんと理解することが何より重要なのだという。

■ビジネスパーソンに必要な英語力を身につけるための道具

 それでは、ビジネスパーソンに不可欠な英語力、すなわち欧米の経済系新聞・雑誌を読むのに必要な英語力を身につけるための道具を以下に紹介しよう。

 英語の文章を正確に読解するには、文法力、語彙力、英語特有のくせ、背景知識を身につけなければならない。文法知識や語彙力がなければ当然文章を正確に読むことはできない。そして、英語特有のくせ——たとえば、同じことを表現するのに言い換えを多用するとか日本語に比べると名詞構文が多いとか―を理解していなくては、文法力、語彙力があっても読むのにかなり苦労する。さらに、アメリカやイギリスの歴史や文化、ものの考え方が身についていないと、文章を読めても正確な理解は得られないのである。

 本書では、学習者のレベルにあった文法の概説書や単語集とそれらを用いた基礎的な英語力の習得法がかなり詳しく書かれている。わたしは実際に本書で紹介されている文法書のうちの2冊を手に取って通読してみたが、たしかにこれらをきちんとこなせば中学レベルの英語力に欠損のある人でもそれを埋め合わせて英語力を底上げできると感じた。

 また、本書では「ニューヨーク・タイムズ」や「タイム」「エコノミスト」から記事を引用して、背景知識不足では英語で書かれた文章を理解するのに苦労するということを丁寧に示してくれている。

 ここまで、ビジネスパーソンに必要な英語力とそれを鍛えるために必要なことを紹介してきたが、具体的なやり方については本書を参照してほしい。本書と勉強を継続する力さえわきに携えて実際に取り組むことができれば、どんなビジネスパーソンでもきっと英語力の向上が見込めるだろう。

文=ムラカミ ハヤト