生き延びる条件は「イかされること」……とんでもないエロさと緊迫感! 拉致された女子高生×一級犯罪者たちによるサスペンス

マンガ

公開日:2018/8/11

『絶頂島の姫』(ゆりせれい/白泉社)

 逆ハーレム系のマンガは多くあるが、こんなにもニッチな設定で主人公を追い詰める作品があっただろうか……! 『絶頂島の姫』(ゆりせれい/白泉社)のことである。

 ある日突然拉致されてしまった女子高生・結衣(ゆい)。目が覚めると、そこは絶海の孤島だった。そこに同じように連れてこられたのは、8人の幼馴染である男たち。しかし、彼らは全員、一級犯罪者になっていた。まったく状況が理解できない結衣に、自称動画配信者である「魔法使い」が、残酷な言葉を告げる。島を抜け出す条件、それは彼ら犯罪者のなかから、たったひとりのパートナーを選ぶことだった。

 ……と、ここまでは逆ハーレム系の設定としては、いわば王道なもの。しかし、そこから先が大問題! 結衣の体には、1日2回、発情を促す「媚薬」が注入され、誰かに「イかせてもらわないと死に至る」というのだ。このギミックが、本作に緊迫感ととてつもないエロさを生み出している。

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 登場する犯罪者たちはひとりもキャラがかぶることなく、あらゆる属性を網羅している。男も女もたぶらかす「愛人スパイ」、メガネ男子でアジア系「マフィア」の幹部候補、フェロモンがダダ漏れのアラブ系「王子」、常に上から目線のオレ様系「大富豪」。いずれも、乙女ゲームのキャラクターであれば攻略するのが楽しそうな人物ばかりだが、当の結衣からすればはた迷惑な話。好きでもない彼らにイかされなければならないなんて……。

 結衣本人は文句なしのビジュアルを持つ美少女だが、恋愛方面には疎いようで、これまでに彼氏がいたこともない。だからこそ、セックスは「世界一好きな人」とじゃなければできない、と思っている。そんな女子高生と犯罪者たちは、無事に島を脱出できるのだろうか。

 テーマがテーマだけに、本作にはエロシーンが満載だ。しかし、それと同時に、サスペンス・ミステリーとしての展開も忘れてはいない。第1巻の最後にたどり着いた廃墟では、結衣と同じ顔をした女性の肖像画が見つかり、この物語の裏側に潜む不可解な謎を予感させる。

 逆ハーレム系マンガというと、主人公の女子がチヤホヤされる展開のものを想像しがち。しかし、本作はそれらの作品と一線を画する。願うことならば、結衣には純潔を保ったまま島から脱出してもらいたい。ハーレムでありながら、誰とも結ばれないことを願わざるを得ないという、非常に珍しい作品だ。どうか結衣が無事でありますように……!

文=五十嵐 大