やさしすぎて滅びた癒し系の生物も…“絶滅”した生物たちの理由が切ない

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公開日:2018/8/15

『わけあって絶滅しました―世界一おもしろい絶滅したいきもの図鑑』(今泉忠明:監修/ダイヤモンド社)

 地球にはじめて生命が生まれたのは、今から約40億年前といわれる。いまだ発見されていない未知の生物がいる一方で、現在では137万種を超えるほどの生物が住んでいることが確認されているともいわれる。

 しかし、地球の長い長い歴史をたどると、何かしらの理由で絶滅した生物たちもいる。その理由は「地球のせい」「ほかの生き物のせい」の大きく二つに分けられると解説するのは、絶滅した生物たちをイラストを交えてコミカルに紹介する『わけあって絶滅しました―世界一おもしろい絶滅したいきもの図鑑』(今泉忠明:監修/ダイヤモンド社)だ。

 本書を読んでみると、彼らの絶滅した背景にある悲喜こもごももじつに様々。なかには「え、そんなことで?」と思わずツッコみたくなるような生物たちもいる。

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◎癒し系・ステラーカイギュウは仲間への“思いやり”が仇に…

 ずんぐりむっくりした体型のちょっぴり癒し系、ステラーカイギュウは「やさしすぎて絶滅」したという同情したくなるような背景を持つ生物だ。

 彼らが住んでいたのは極寒の北極。脂肪をたくわえたことで大型化したジュゴンの仲間で、歯を持たず、海藻を歯茎でかみちぎって食べていた。時に、仲間が攻撃されたときは、群れで一丸となって集まり守ろうとするという“仲間思い”な生物でもあった。

 しかし、人間に発見されてからわずか27年。1768年に彼らは絶滅してしまったという。その理由は、人間たちが彼らの肉や皮を取ろうと乱獲したため。仲間のピンチに駆けつけるというやさしさが仇となり、一網打尽にされてしまった。

◎愛らしいパンダに打ち勝てなかった史上最大の霊長類

 茶褐色の毛を持つ史上最大の霊長類・ギガントピテクスは、日本の動物園でも大人気の生物・パンダとの生存競争に負けてしまったという悲しい背景を持つ。

 正確に絶滅した時期は不明だが、ゴリラの約1.5倍ものサイズを誇ったというギガントピテクス。彼らが住んでいたのは、中国にある森の奥深く。当初はくだものを捕食していたが、地球全体の寒冷化により森林が少なくなるにつれて、寒さに強く生長の早いササを食べて生きるようになっていったという。

 しかし、彼らがササに活路を見出したのと同じ頃、森の中ではパンダの祖先が誕生した。その結果として、小柄ながら食欲旺盛だったパンダの祖先との競争に負けてしまい、体格の大きな彼らが先に絶滅してしまったのだという。

◎胃袋で子育てをする子煩悩なカエルは“カビ”で一網打尽に

 オーストラリアに生息していた、両生類の一種であるイブクロコモリガエル。産んだ卵を飲み込んで、子どもが大きくなるまでは胃の中で子育てをしていたのが名前の由来である。

 彼らが絶滅した理由は、別の大陸からやってきた「カエルツボカビ」だった。胃の中で子育てをしている間は、母親が絶食するほどの“子煩悩”だった彼らだが、ダム建設や森林伐採により生息地が狭められていったという経緯を持つ。

 さらに、不幸だったのは人間がどこかから持ち込んできた“カビ”が蔓延してしまったこと。呼吸と共に全身の皮膚にカビが広がってしまい、息ができなくなった彼らはとどめを刺されることになった。

 本書を読むと、地球上には「こんな生物もいたのか」と驚く。人間はなぜか、生態系の頂点にいるようなイメージもある。私たちのさりげない行動が、どこかに住む生物たちの生命を脅かしているのかとも思わされる。

文=カネコシュウヘイ