あなたの健康の悩みは? 予約が取れない人気鍼灸師が教える不調の改善法

健康・美容

2018/8/20

『絶対に死ぬ私たちがこれだけは知っておきたい健康の話』(若林理砂/ミシマ社)

 猛暑、予測のつかない天気…この夏、体調を崩してしまった方も多いのではないでしょうか。できれば常に健康でいたいもの。『絶対に死ぬ私たちがこれだけは知っておきたい健康の話』(若林理砂/ミシマ社)は、普段「健康に気をつけている」と自負のある方のほうが、衝撃を受ける可能性が高い一冊です。

「肉体・精神ともに良い状態で、社会的にも良い状態で、病気がなく、弱いところもない」という、WHO(世界保健機関)憲章前文にある「健康」の理想イメージが本書の冒頭で紹介されますが、そんな完璧なコンディションの日は年に数日だろうと著者は一刀両断します。

 予約が取れない人気鍼灸師の著者が考える「健康」とは何か。それは、「法則に則って体を大切にする=養生」です。草花が伸びてやがて枯れていくように、成長し老化していく自分の体を手入れする。東洋医学に大きく影響を受けている著者の理想は、「無為自然」と表現するのが適切でしょう。

絶対に死ぬ私たちですが、死んでしまうまでの間、この世をけっこう楽しんで生きられるココロとカラダの「いい塩梅」の状態を目指すのが、私にとっての「健康」だと思うのです。私の最終的な目標は、「ああ、楽しかったなあ」と息をひきとること。

 寝る時間は3重の締め切りを設定して死守する、食事の半分は野菜を食べる、習慣にする運動はラジオ体操だけ…。著者は書中でいくつかの方法を読者に紹介しているものの、より大事なのは、世の中にあふれる「寝る・食う・動く」に関する雑多な情報にとらわれず、シンプルな習慣を保ち続ける意志の強さだと説明しています。

 たしかに、「寝る・食う・動く」ということに関しては、グッズや方法論が世の中にあふれています。有名人のしている手法やサクセスストーリーについついつられてしまい、あれやこれやとエンドレスに試してしまいがちです。「食う」だけでも、調理法、食べる順番、調味料の有無、有機食品かどうか、食品の成分・効能とそのバランス、自分の体質など…実に様々な留意点があります。

 気にすることがあまりに多いため、私たちはいつの間にか食べ物を薬のように思ってしまっているところがないでしょうか。著者はその前提を問い直します。

結局のところ、食事というのは体を養うためのものであり、今以上にものすごく健康になったり、ある重大な病気の特効薬になったりするような働きはないのです。

 たとえば、旬の食材を知り、それをよりよい状態で食べることを本書では勧めています。夏に冬の果物を食べることができ、冬に夏野菜を食べられるようになったのは、ごくごく最近のことです。食べ物の「旬を知る」ということは、より自然な食習慣を実現し、体を養生するために必要なのだと本書を読むと納得できます。

 鍼灸師という著者の経歴もあってか、優しさの中にも針を刺すようにチクリチクリと思考に刺さる文体が特徴的な本書は、健康については色々知っているという自負がある人こそ、ぜひチェックしていただきたい一冊です。

文=神保慶政