炎上の仕組みを理解すれば、ヒットを生むことも可能? 実利につながるSNS運用術

ビジネス

公開日:2018/8/24

『炎上とクチコミの経済学』(山口真一/朝日新聞出版)

 今や個人も企業も無視できない情報発信の場となっているSNS。企業でも公式アカウントを運用し、ファンの獲得や売上増大を目指す例が増えている。しかしその反面、「炎上が怖い」「運用に関する知識がない」といった理由で踏み出せずにいる企業や、SNSならではのメリットを享受できていないパターンも多いようだ。

 SNSは、企業(生産者)が消費者と、ある意味同じ目線で交流できる、数少ないツールだ。炎上リスクを考える必要はあるが、過剰に恐れてしまうのは双方にとってもったいない。もし分からなくて怖いなら、きちんとした知識を身につけ、万が一の時に落ち着いて対応できる術を持てばいいのだ。そこでオススメしたいのが、『炎上とクチコミの経済学』(山口真一/朝日新聞出版)。本書は、SNSやクチコミサイトにこれまで疎かった人でもきちんと分かるよう、SNSの現状やユーザーの特徴、さらにこれまでの事例から炎上の仕組みや対処法を整理して解説してくれている。

■炎上はどういうタイミングで起こるのか?

 企業は自社のブランディングや宣伝目的でSNSを運用する場合が多いが、多くの一般ユーザーは宣伝相手や広告の受け皿にされるためにSNSをしているわけではない。さまざまな立場のさまざまな相手と“同じ立場”であるように交流できるのがSNSの魅力で、そういったやり取りで「楽しみ」を得るために利用しているのだ。それと同時に、企業アカウントの運用者、いわゆる“中の人”がお金を貰って仕事としてSNSを運用しているという事実も、一般ユーザーはもちろん理解している。つまり、企業アカウントが“企業として”運営する立場にあることを忘れていいわけではないのだ。

advertisement

 こういったSNSの特徴をきちんと理解せず、あるいは途中で見失ってしまい、「ただの仲良し」「何でもあり」と勘違いして運用すると、企業としての立場ではあり得ない、いわば圧力や偏見とも受け取られかねない不適切な発言をしてしまい「炎上」へと発展してしまうのだ。中にはよその炎上の巻き添えにされるケースや、厄介な相手に絡まれて、思わぬタイミングで炎上するケースもあるため、炎上を100%阻止することはできない。だが、きちんとした知識を持っていれば、リスクを減らすことはできるはずだ。

■一番マズい火消しの方法とは?

 万が一炎上してしまったとしても、その対処法で炎の広がり方は大幅に変わる。炎上が広がるのを恐れて投稿を削除し、騒動をもみ消そうとするケースをよく見かけるが、これはまったくの逆効果だそう。炎上した時点で、その投稿は誰かによってもう保存されているのが常だ。そのため、記録画像とともに「もみ消した」「誠意がない」という非難を投稿され、さらなる炎上を生んでしまう。

 もみ消したり隠ぺいしたりするのではなく、迅速に事実関係を公表し、言い訳をせずに対象を明確にして謝罪をおこなうことが大切なのだそう。

 こうやって一例を挙げると、「やっぱり怖い」「自分には無理」と感じる人や企業もいるかもしれない。しかし、よく考えてみてほしい。この拡散効果は、何も悪い方向にのみ起こるわけではない。みんなに「良い!」「共感できる!」と思ってもらえれば、企業の規模に関係なくあっという間に大ヒットを生むチャンスもあるのだ。つまり、誠実な仕事をして的確なPRをおこなえば、SNSは強い味方になってくれるのだ。

 この『炎上とクチコミの経済学』には、炎上の予防や対処法だけでなく、PRの仕方や“愛されアカウント”になる方法、またSNSという架空の“場”の実態などについても詳細に書かれている。今までSNSをうまく活用できていなかった人にこそ、ぜひとも読んでほしい。理解したうえで運用すれば、きっと新たな繋がりができ、プラスの効果が生まれるはずだ。

文=月乃雫