「相手のスケジュールを把握せよ!」 自分がトクするための“気くばり力”

ビジネス

公開日:2018/8/27

『できる人は必ず持っている一流の気くばり力』(安田 正/三笠書房)

 あなたは仕事をしているとき、どれくらい「気くばり」を意識しているだろうか。「まったく気にしていない!」という人はいなくとも、「あまり媚びを売るようなことはしたくない」「実力があればきちんと評価されるはずだ」と考え、それほど積極的ではないという人も多いのではないか。だが、本書『できる人は必ず持っている一流の気くばり力』(安田 正/三笠書房)は、その「気くばり」こそが、すべての仕事の成果を生み出す「源泉」であると語っている。

 著者が、企業の役員や、経営者と交流するようになって気づいたのは、「一流の方々は、みなさん1人残らず、気くばりの“達人”だ」ということ。彼らと仕事をしていると、とても居心地が良く、物事がスムーズに進む。そして、最後には「また一緒に仕事をしたい」と思わされる――。そんな彼らは、一体どんな“気くばり力”を持っているのだろうか。本書では、現在さまざまな企業で研修を行う著者が、仕事における「気くばり」のパターンを体系的に解説する。そのうちいくつかの例を見てみよう。

■相手目線で、仕事の「スケジュール」を組む(俯瞰の気くばり)

 ビジネスにおける気くばりで、何より大切なのが「相手のスケジュールに配慮すること」。例えば、上司から仕事を指示された場合、その仕事が“上司にとって”どれくらい重要なのかを判断し、仕上げるまでのスピードを決める。自分で判断できなければ、仕事を振られたとき、必ず「いつまでですか?」と〆切を確認する。そうすれば、自分が「後でやればいいや」と考えていたものが、実は上司にとっては最優先の仕事だった…なんていうトラブルは避けられるはずだ。

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■言葉がけは「共感+提案」のセットで(共感の気くばり)

「寒くないですか?」「(こんなケガをして)痛かったでしょう」というような、五感に訴えかける共感性も、相手に「気が利く」と思わせるポイント。さらにプラスαとして、「共感をした後、すかさず提案する」と、さらに一歩踏み込んだ気くばりになる。例えば、あなたが取引先と会ったとき、すぐに「外は寒かったですよね。暖房の温度を上げましょうか」と言われたらどうだろうか。思いがけない気くばりが強く印象に残るはずである。

■「相手と話したこと」を次会うときのためにメモしておく(尊重の気くばり)

「自分のことを覚えていてくれる」というのは、誰でもうれしいことだ。営業マンであれば、仕事で名刺交換をしたとき、裏にその人の情報(会った日時、用件、特徴など)を書きこんでいる人は多いはず。著者は、さらにワンランク上の「気くばり」として、相手との会話の内容をノートやスマホにまとめておくことを提案している。例えば、「○○という本が好きなんです」という話題が出たとする。それをメモしておき、次回までに読んで感想を話せるようにしておく。そうすれば、相手は喜んでくれるだろうし、それが共通の話題となって会話も弾む。

「気くばり」は、基本的には相手のためである。だが、それは自分が信頼されたり、仕事で高い成果をあげることにもつながるから、結局のところ自分のためのものでもある。「気くばりなんて性に合わない」と考えている人も、「最終的には自分のためになる」と割り切って考えてみれば、案外すんなりできるようになるかもしれない。本書は、そんな社会人のための味方である。

文=中川 凌