よくいる幽霊のタイプ別に傾向と対策を図解。「死亡フラグ」が立っても殺されない方法

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公開日:2018/8/25

『ホラー映画で殺されない方法』(セス・グレアム=スミス:著、入間 眞:訳/竹書房)

 あなたが深夜にふと目覚めると、長い髪の女がずしりと身体の上に覆いかぶさっている。これはきっと悪夢に違いない。あるいは、次に目が覚めると濃く霧がかった湖畔の別荘にいる。デッキの向こうに続く深い森からは、人のものとも獣のものともつかない呻き声が段々こちらに近づいて来るようだ。これもきっと悪夢なんだと思いたい。

 だが、もしこれが悪夢ではなく、「ホラー映画の中にいる」という状況だったらどうだろう? 命拾いしたと安心するのは残念ながらまだ早い。理由は明白だ。なぜなら、あなたは広瀬すずでも菅田将暉でもないからだ。アイドルでも有名俳優でもないキャラクターが寝ぼけた間抜け面を晒して映画に登場してきたら、あなただってきっとこう思うはずだ。

「あ、映画序盤で殺されるのはコイツだな」と。

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 いわば「死亡フラグ」が立ってしまったあなたを救うバイブルになるのが、『ホラー映画で殺されない方法』(セス・グレアム=スミス:著、入間 眞:訳/竹書房)だ。本書はさまざまなシチュエーション別に、あなたがホラー映画の中に入ってしまってもそれを切り抜ける実践術を説くガイドブックだ。実に心強い。

 本書の著者は、『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』のプロデュースや、ティム・バートン監督作品の脚本を手掛けるなど、多数の恐怖映画製作に関わってきた人物。数々の恐怖ストーリーを作り上げてきた第一人者として、名作ホラーの傾向を分析し、幽霊や殺人鬼、ヴァンパイアたちを打ち負かす策を丁寧に教えてくれる。本書はホラー映画の「あるある」がぎっしり詰まった1冊だ。

■人間そっくり? よくいる幽霊を6タイプに分析

 本書から「良い幽霊、ヤバい幽霊」の見分け方と対策を簡単に紹介したい。あなたが出会うかもしれない幽霊を6タイプに分類し、筆者なりに危険度を5段階で評価してみようと思う。あなたが会ったことのある幽霊も、この診断に当てはめてみてほしい。

【タイプ1:仲間系】危険度
 このタイプの幽霊は自分が死んだことを認知しており、新しい霊的立場をプラスにとらえようとしている。幽霊ならではのトリックで生者を楽しませ、友達になろうとする。わが子の成長や恋人の幸せをそっと見守る幽霊もこのタイプだ。運が良ければ仲間系幽霊に泥棒退治をしてもらえるかもしれない。

【タイプ2:困り者系】危険度
 家具を勝手に動かす、新聞を取りに出たあなたをドアの外に締め出す、そういったタイプの幽霊は、クラスでいたずらが過ぎて、先生に居残りを言いつけられるようなお調子者タイプだ。死んだ今や何の支障もなくいたずらし放題なので、当人は喜んでいるらしい。迷惑ではあるが身体的危害を加えることはないので、危険度は低そうだ。

【タイプ3:要支援系】危険度★★★
 重要な何かをなし遂げる前に、つまりこの世に何らかの想いを強く遺して、死んでしまった幽霊。その目的をあなたに達成してもらおうと思い込んでいるため、あなたが協力的であれば、彼らは友好的だ。だが、あなたが依頼を無視したり、任務に失敗したりしたら、相当の復讐を覚悟しなければならない。一方的だが見込まれてしまった限り、仕方がないのだ。

【タイプ4:かまって系】危険度★★
 枕元でも風呂場でも場所時間を問わずあなたの近くに現れてひっきりなしに愚痴をこぼす幽霊は、このタイプ。彼らは「ここから出ていけ」と警告を繰り返すが、その内心は真逆だ。あなたがいなくなったら彼らの愚痴相手をする者がいないではないか。度を越えて生者に依存しているので、命を脅かすほどではないといえども、かなり面倒な相手。

【タイプ5:無自覚系】危険度★★★★★
 このタイプの幽霊は、何にも気づいていない。当人が死んでいることにも気づいていない可能性が高く、霊的立場を理解していないので意図せずに生者を危険な目に合わせる頻度が高い。どんなにあなたが親切だとしても、幽霊に真相を伝える役(「あなた、とっくに死んでますよ」と言う役)は辞退したほうがよさそうだ。

【タイプ6:くそ野郎系】危険度★★★★★★★
 人間にどこまでも見下げ果てたくそみたいな奴がいるのと同様、幽霊にもただ世界を滅茶苦茶にしてやりたいと暴虐の限りを尽くす奴がいる。諦めが肝心だ。なぜなら、彼らと対等に対峙する術策は、あなたにはないのだから。もし戦いを挑むとしたら、強力な霊的協力者が友人にいる場合に限られそうだ。

■ホラー映画は、実世界をタフに生き抜くスキルを磨く?

 ホラー映画には、古典芸能にも通じる決まった「型」や「あるある」が必ずある。それらのルールや作法を踏まえているからこそ、映画を観る私たちは安心してその世界観を楽しむことができる。

 恐怖と笑いは紙一重だ。ついさっきまで涙目になっていたのに、観終えた途端にその映画を笑い飛ばせるというのも、ホラー映画ならではの快感ポイントだろう。本書巻末には、この世を生き抜くスキルを磨くための「教材」として、恐怖映画のおすすめリストが掲載されている。皮肉の効いたひと言解説とともに名作が紹介されているので、ただリストを眺めるだけでも映画ファンにとっては楽しいだろう。もしあなたが恐怖映画に出演する予定がなく、平穏な人生を送るつもりであれば。

文=田坂文