母の呪い、公開処刑…女性は美しくて残酷な生き物——写真家によるリアルな女性論

暮らし

公開日:2018/8/27

『ウーマン』(下村一喜/集英社)

「性」についての話題に事欠かない昨今。そしてまた、いわゆる炎上騒動が起きるのも、「性」に関する発言の場合が多い。そんな時代に「男」や「女」について語るのは、勇気のいることだと思う。

『ウーマン』(下村一喜/集英社)では、「日本で最も女性を美しく撮影する写真家」といわれる著者が、古今東西あらゆる女性たちに思いを馳せながら、出会ってきた“ウーマン”について、独特の視点と切り口で語っている。

■母は娘に呪いをかける

 母親の呪い…それは、自分が果たせなかったことを娘に託すこと。異性に対する考え方も、毎日少しずつ、でも確実に受け継がれる。

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「パパみたいな男性が一番よ」
「パパみたいな男性に引っかかっちゃダメよ」

 女と化した母親から、まだ幼く逆らいようがない娘に、じくじくと浸透し、母親の男性観がそのまま娘の男性観のベースになる。数十年経って娘が大人になったとき、自分の人生と母の関わりをどう考えるのか。母の呪いが白魔術だったのか黒魔術だったのかはこの時、娘がどう捉えるか次第。いずれにせよ、母親の価値観が大きく影響を与えることは確かだ。

■女性は公開処刑された女性が好き

 女性同士の関係は、男性同士のようなピラミッド型のタテ社会と違い、もっと複雑だ。

「幸せすぎてはいけない」

 それが彼女たちの間での、暗黙のルール。現実がどうであろうと、自らの現状には適度に不幸な味付けをした上で控えめにしていないと危険なのだ。女友達からの「公開処刑」を避けるためには、それが必要不可欠な“礼儀”であり防御策になる。例えば、恋愛が成就して結婚の運びとなったとき、女友達への報告には高度なテクニックが必要だ。

相手は超ハンサムで有能、高収入の男性で、指輪は大きなダイアモンド、結婚したら彼の所有する都心のマンションで悠々自適。

 そんなこと、真実だとしても絶対に口にはできない。ではどう伝えるか。

「えー、全然。よく見ると鼻から毛が伸びてたりするし、写真写りがいいだけだよ。(中略)指輪は、知らないけどそんなに高いものはもらえないよ。すごい古いマンションに住むと思うけど、仕事は続けるのかな、まだ相談してないけど。お姑さんとはあまり気が合いそうにないし…」

 もっとも、「おひとりさま」であれば話は別。状況に応じて、仲間と群れたりひとり行動をしたりと器用に使い分けることができれば、それはそれですばらしい。どちらにせよいえることは、群れない女性はかっこよく、そして美しくみえるということ。

私は私。
と同時に、
彼女は彼女。
彼は彼。
そう決めたときから、あなたはひとりのウーマンになるのです。女性として一人前になります。

 自立して、他人に寄りかかることなく自分の脚で歩く女性の姿は頼もしく綺麗だ。そんな自立した“ウーマン”予備軍の女性たちよ、まずは背筋を伸ばして自分の力で立ち上がってみることから始めてみませんか。

文=銀 璃子