変態、男色、獣姦…あらゆる「性」を受け入れる江戸の寛容

社会

2018/8/28

『江戸春画考』(永井義男/文藝春秋)

 親にはナイショで… 思春期の頃、自室や学校の校舎の裏で、エッチな本をドキドキしながらこっそり見ていた経験はないだろうか。昔は手に入れるところからすでに心臓が高鳴っていたものだ。今はどうか。コンビニの書棚に溢れる刺激的な表紙の雑誌類、アダルト動画、投稿サイト…現代はそんな“ナイショ”が飽和状態で簡単に手にすることができる。こんな“ナイショ”の楽しみを享受しているのは現代人だけなのだろうか。

 いや、そんなことはない。時は江戸時代にまで遡る。『江戸春画考』(永井義男/文藝春秋)は、時代小説家であり、江戸時代に関する著書多数の著者が「春画」を通して江戸の人々の「性」について軽妙なタッチで解説している。

■わが国初の春画展

 2015年秋、我が国初の「春画展」が東京都文京区の永青文庫で開催された。欧米での開催に遅れること幾年月…来場者は女性が多く、盛況だったという。この春画解禁を受けて、「春画はワイセツではなく、芸術だ」と勢いづく意見もあるが、著者は江戸春画の美術工芸品としての水準の高さを認めながらも、辟易としているという。

そもそもワイセツでなかったら春画ではあるまい。
ワイセツを抜きにすれば、春画の存在価値はないといってもよい。

 春画は誰かに「見せる」ためのもの。見た人の気持ちを甘美な煽情にいざなうのがその役割だ。春画には男女の交わりの中でも「後背位」(いわゆる「バック」)が描かれたものが多いがこれは、後背位を描いた方が肝心の局部が露わになり、見る者をより興奮させ喜ばせることができるからだと考えられている。

■とことん「性」を楽しもうとした江戸の男女

 江戸の文化は百花繚乱。それは、性交体位「四十八手」についても同様だ。正常位、屈曲位、乗馬位、後側位など、そのバリエーションの豊富さもさることながら、筏崩し(両足伸展位)、松葉ちがい(互御位)、鏡茶臼(対向座位)など、雅で含蓄の深い名称にも趣がある。

 また、江戸時代の性事情の解説本によると、江戸の男女は性具や媚薬などのアダルトグッズを屈託なく用い、性生活をおおいに楽しんでいたという。「女悦道具の図」にはさまざまな性具が描かれている。いくつか紹介しよう。

・張形(はりかた)水牛の角などで作った擬似陰茎。今風にいうと、ディルド。
・久志理(くじり)小型の張形。指にはめ、指サックのように使用する。
・琳の玉(りんのたま)大きさの異なる金属製の玉で膣に入れる。性交中、膣の中でふれあって妙音を発し、喜悦がますという。女がうつむき姿勢になり尻をたたくと簡単に飛び出るという。

 どれも、本当に快感に結びつくのかは定かではないが、江戸の人々の性に対する貪欲な姿勢が現代にも通じて滑稽だ。

 とにかく江戸は自由だった。変態的行為も、男色も、獣姦も、享楽の対象だった。そんな大らかな時代だからこそ、栄えたのだろう。

 現代の私たちが忘れてしまった江戸の寛容さに、深い憧憬を感じてしまうのは、私だけではないはずだ。

文=銀 璃子