いつか孤独を愉しめる自分に! 明るい月あかりの下、寂聴さんと語らう寂庵の夜
公開日:2012/3/22
孤独を生きる、ではない。この本のタイトルは孤独を「生ききる」だ。
不倫など濃厚な恋愛経験を経て出家した女流作家・瀬戸内寂聴は、どんな言葉でその境地へ導いてくれるのだろうか。
まずは、身近な孤独について。
飲み会に呼んでもらえなかったとか、困ってる時に誰も助けてくれなかったとか、メールの返信が遅いとかとか、etc…。日々の小さなことに悩み、プライドや自己愛が満たされない虚しさを「孤独」と感じ、身勝手な怒りに苦しんだ覚え、私にもあります。しかし、この形而下的な孤独感については、原因を考えてみること、と「因果」という言葉を使ってバシッとお説教されます。反省することしきり。
仏教の教えを交えて話し、時には叱り、分析もしてくれるので、すぐに腑に落ち、実践できることもたくさん書かれている。しかし、本書で多くのページを割いて説かれる「孤独」は、HOW TOモノや自己啓発本では扱い切れない孤独の本質的な捉え方について。
婚約者を亡くし、その後ショックから立ち直ってできた恋人を友達に取られた女性の話。90歳過ぎて40代女性への恋に泣く作家の話。十数年来の愛人が重い病気にかかっていながら立場上お見舞いに行けず痩せて泣きじゃくる女性の話。壮絶な大人の孤独のオンパレードなのだ。
そんな様々な人たちの、それぞれ違う形の孤独を、時には厳しく覚悟を迫り、時にはただ優しく包んでくれる。
「人は生まれてから死ぬまで孤独」なんて頭ではわかっていても、それでもやはり孤独は辛い。形而下的な孤独だとわかっていても辛いし、実存的な孤独はもっと辛い。孤独をうまく飼い慣らそう、孤独に甘えるな、孤独を愉しめるようになろう、いろいろ書かれているが、自分にできるのかなー…と思いながら読了。
でも、なぜか癒されている私がいた。
読み終わっても孤独。
それを寂聴さんはよくわかってくれている気がして。
寂聴さんが寂聴庵にたずねて来る人たちの話に耳を傾けるという形式でお話は進みます。月明かりやそこに咲く花の描写に引き込まれます
はじめにでしっかり書かれている「いっそ孤独を皮膚の上のもうひとつの皮膚として、肌身にまとい、死ぬ日までそれと共棲して、いききろう」がスタンスです
中盤から、不倫のお話が多くなります。さすが寂聴さんですね
孤独に甘えている間は人が遠ざかる、孤独を甘やかしてやりましょう、と。孤独とつきあう方法を知れば凛々しく生きられるのかもしれません。なかなか悟れませんけどね!