『少年ジャンプ』で連載中の“役者モノ”の展開がアツすぎる! 努力する天才役者の成長は止まらない!

マンガ

更新日:2018/9/3

『アクタージュ act-age』(マツキタツヤ:原作、宇佐崎しろ:漫画/集英社)

『週刊少年ジャンプ』で連載中の『アクタージュ act-age』(マツキタツヤ:原作、宇佐崎しろ:漫画)は、ジャンプでは珍しい“役者モノ”で、主人公も女の子という、ちょっと異色の作品だ。

 主人公は、女優を目指す女子高生・夜凪。有名芸能事務所スターズのオーディションで天才的な演技をするが、技術を重視するスターズでは彼女の演技法を「危険だ」として失格にする。彼女の演技法とは、その役柄を演じるために、その感情と呼応する自らの過去を追体験する「メソッド演技」というもので、彼女は不遇な人生の中で無意識のうちにその演技法を独学で極めていたのだ。

 あまりに役柄に没入してしまうがゆえに、その感情を引きずりやすい。そのせいで心を壊してしまう可能性もある。

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 そんな、圧倒的な才能をもちながらも日の目を見ることがなかった彼女は、そのスターズのオーディションに同席していた映画監督・黒山墨字との出会いにより、人生に大きな転機を迎えることとなる。

 この物語は、彼女が自らの才能を武器に自ら道を切り拓いていくものではなく、黒山という師匠とともにひとつひとつステージをクリアしていきながらレベル上げをしていく、RPGのような世界観で繰り広げられる。

 目の前に現れるライバルは、彼女とはまったくタイプの異なる女優・百城千世子や、夜凪と似たような性質をもちながらもレベル感の違いを見せつける明神阿良也など。夜凪は彼らと舞台をともにすることで、自分の欠点に気づき、それを補いながら役者の世界で生きていく術を身につけていく。

 夜凪が天才でありながらも、性格があまり人間離れしていないのもいい。役者として演じるその瞬間、見ている人々がゾッとするような狂気を見せるのだが、日常場面では等身大の表情を見せる。彼女は不器用で友達を作るのが下手であったり、時折他の人たちが理解できないような不可思議な発言を繰り出したりするが、あくまで勉強熱心で没頭しやすいだけの普通の女の子だ。

 大きな武器をもちながらも、それをコントロールしきれない、欠点だらけの主人公。そんな主人公が師となる人との出会いで、少しずつ自分のスキルを上げていく。異色ではありながらも、確かに『少年ジャンプ』らしい漫画で、読んでいて痛快な場面も多い。

 天才の役者が主人公ではあるが、単なる天才無双の漫画ではない。そこには、演技や役者という仕事に対して誠実でひたむきな、ひとりの少女の成長譚がある。

文=園田菜々