本当においしい料理が3品あれば、居酒屋は繁盛させられる! 目からウロコの商売のコツ

ビジネス

2018/9/3

『たった3品で繁盛店はできる! 居酒屋の神様が教える小さな商売のつくり方』(宇野隆史/日経BP社)

 賑わいに惹かれてふらりと立ち寄った居酒屋。店員の笑顔とキーンと冷えたビールに1日の疲れが吹っ飛んだ…。そんな経験を持つ方は多いだろう。立地がイマイチでもメニューが少なくても、ひとり勝ちで繁盛している店にはどんな秘密が隠されているのだろうか。

 その手の内を惜しみなく明かすのが『たった3品で繁盛店はできる! 居酒屋の神様が教える小さな商売のつくり方』(宇野隆史/日経BP社)だ。著者は“居酒屋の神様”こと宇野隆史氏。「くいものや楽」などの人気店を擁する楽コーポレーションの社長で、同社から巣立ち店を持った経営者は数百人にも及ぶ。いわば居酒屋学校の校長ともいえる宇野氏の言葉は、飲食業に限らず自分で何かを工夫してみたいと思う人に無数のヒントを与えてくれる。

 宇野氏の考える最強の居酒屋、ファンに支持されて生き残っていく店とは、「おやじやおばちゃんがカウンターの後ろに立って「いらっしゃい!」と笑顔で迎えてくれるような、人の顔が見える個人の店」だという。本格的な料亭とは異なり、居酒屋に求められるのは何よりも気配り。料理も本当においしいものが3品あればまずは十分だという(たとえば肉じゃが)。精鋭の3品とサービスをどう磨くか。お客さんが喜んでくれるものは、たとえ地味でも「あきない」「やめない」「変わらない」ことが何よりも大事だという。

 誰でも店を繁盛させるには、掃除や挨拶などの基本の徹底に尽きる、と強調する。たとえば掃除をするなら両隣の店まで掃除をしよう。次に重要なのはお客さんとの関係づくりだ。新人スタッフでもどうやってお客さんを楽しませるか。その視点から生まれたのが “なんちゃってロゼ”。お客さんの目の前で赤ワインと白ワインを混ぜ、会話を盛り上げるスペシャルドリンクだ。発想の先には必ずお客さんの笑顔がなければいけない。

 印象的なのは「ないない尽くしの強み」。自分が「できない」ことを知っている人間にはハングリー精神が生まれ、意外にも伸びるという。いまは頼りなく見えるメンバーも逸材に変わる可能性大だ。

 相手や現状に対して常にプラスの視点を持つことも重要だという。たとえばある店長のケースを紹介しよう。彼は接客が不得手だったそうだが、かわりに独自の強みを持とうと努力を重ね、誰にも負けないぐらい店をピカピカに磨き上げた。その実績から店長に自信が生まれ、店を立派に繁盛させたという。

 さらに「売れる商品」を生むコツは「“売る”ストーリーを頭で思い描く」ことだという。たとえば料理なら、作るだけではなく、お客さんの席まで運んでお客さんが笑顔になるまでの全体像を具体的に想像するべし。商品開発と売る行為は密接に関わっていることを強く意識するべきというのがそのココロである。

 お客さんの笑顔のためには、新しいアイデアにもひるまず挑戦しよう。だが「いつもちゃんとおいしい、と言ってもらえる定番料理は大事に守り、磨きぬくべき」とも釘を刺す。店のファンづくりのためには、けっしてお客さんの期待を裏切ってはいけないのだ。

 宇野氏の言葉で印象的なのは、「面白い」「色っぽい」というワード。いずれも人間臭く相手の心を動かすライブ感のある言葉だ。本書で徹底されている「お客さんを楽しませる」という視点は、AIに対して人間が強みを発揮できる分野でもあり、これからの時代を生き抜くヒントとしてもおもしろい。

文=桜倉麻子