「普通」と違って何が悪い! 衝撃作『コンビニ人間』を読者はこう読んだ!

文芸・カルチャー

2018/9/8

『コンビニ人間』(村田沙耶香/文藝春秋)

「どうして結婚しないの?」「どうして子ども産まないの?」「どうして就職しないの?」「どうして普通にできないの?」――世間というものは少しでも「普通」と違う人生を歩もうとする人たちにどこからともなく牽制が入れてくるものだ。どうして他人の人生に口を出してくるのだろう。「普通」という物差しで他人を評価してそこから外れた人たちを徹底的に批判する。世の中にはそんな空気が流れてはいないだろうか。

「普通」に生きることがそんなに重要なのか。第155回芥川賞を受賞した村田沙耶香氏の『コンビニ人間』(文藝春秋)はまさに「普通」とは何かを考えさせられる衝撃作。エキセントリックな思考回路をもつ主人公は周囲の人々と対峙しながら、次第に自分の本当の居場所を見出していく。

 主人公は、36歳未婚女性、古倉恵子。大学卒業後も就職せず、コンビニのバイトは18年目。これまで彼氏がいたことはない。オープン当初からスマイルマート日色駅前店で働き続け、日々食べるのはコンビニ食。夢の中でもコンビニのレジを打ち、完全にマニュアル化された職場でマニュアル通り仕事をこなしている。ある日、新しいバイトとして白羽という男が入ってきた。彼は恵子に、そんなコンビニ的生き方は恥ずかしいと突きつけられるが…。ゆらいでいく正常と異常の境目。「普通」の生き方とは一体何なのだろうか。

 読書メーターユーザーはこの作品をどう読んだのか。

まな
主人公は少しだけ「普通」と違う。しかし何故こんなにも感情移入してしまうのだろう。この本を通して見ると、主人公からしたらいわゆる「普通」の人達がまるで狂った人達のように見えてしまう。「普通」に正解などないのだと改めて気付かせられる物語でした。「普通の人間っていうのはね、普通じゃない人間を裁判するのが趣味なんですよ。」白羽さんのこの台詞には頷かざるを得ません。自分もいわゆる「普通」とは外れて生きてきたから白い目で見られる辛さも、裁判にかけられる苦しみもわかるから。

kuroi@読書
異常なものは排除されていくこの世界の姿は本当に正しいのか、改めて考えさせられた。白羽や恵子は不器用で人の期待に応えることは出来ないが、そんな生き方でもいいのではないか。私の周りにも白羽や恵子がいて、息苦しい思いをしているのではないか。

のの
自分がどこかで感じていた生きづらさがしっかりと言葉に直され活字にされたような本。私のことですか、衝撃。っておもった。

mari.
先が気になり一気読み。読み始めは、主人公は相当変わってる人だなと思ったけれど、自分だっていろんな場で排除されないために、周りの人に合わせようとしたり、気を遣ったり、本音を言わないときだってある。たぶん、皆あると思う。主人公と同じで、「普通の人」になりたい人だったり、知らぬ間にそれを意識している人は多い世の中なのだと、この本を読み客観視して気がついた。「普通の人」が正しいのか‥それを考えるきっかけになった。

モモタロス
少しでも枠から外れた人は、異端とされ周りからやんややんや言われる。その鬱陶しさをすごく簡潔に分かり易く書いてます。誰もが何らかの形で体験したことがあるはず。

しゃくたく
36歳女性、コンビニバイト歴18年、”コンビニの為に生きる”「変わり者」。コンビニ人間・古倉さんの或る日の出来事。――久々の一気読み。何処かに所属するという事、何かを強く信じるという事。たとえムラの異端児であっても、彼女はまさしく『コンビニ人間』。”普通””標準”を超え、天啓や本能に従う生き方は羨ましささえある。普通って何でしょう。価値観を揃えて疑問をなぁなぁにして「人生こんなもんさ」と悟ったフリして語る人間には決して辿り着けない境地。いつもお世話になってます。コンビニばんざい。

mana.
怖かった。コンビニをテーマにここまで書けるなんて。「自分がよければいい」という考えと、周りの好奇心半分のおせっかいな目がどうしても相容れないってことはここまで極端なエピソードでなくても誰しも経験したことがあるのではないかな…。タイトルからは想像できない話で、いい意味で期待を裏切られました。

 恵子が変わり者であることは間違いない。だが、「普通」であることを押し付けようとする周囲の人たちも狂っているように思わされる。自分の生き方は自分で決めれば良い。「普通」でなくったって良いのだ。

気が付いたんです。私は人間である以上にコンビニ店員なんです。
人間としていびつでも、たとえ食べていけなくてのたれ死んでも、そのことから逃れられないんです。私の細胞全部が、コンビニのために存在しているんです。

 自分は「普通」とは違うと感じている人。そのことによって周囲から批判されてばかりいる人。そんな生きづらい毎日を送っている人たちはこの本を読めば、きっと救われるに違いない。

文=アサトーミナミ