「自分は不良品」22人の発達障害者たちが語る“生きづらさを抱えた私たちの心”

暮らし

2018/9/4

『私たちは生きづらさを抱えている 発達障害じゃない人に伝えたい当事者の本音』(姫野 桂:著、五十嵐良雄:監修/イースト・プレス)

「集団にうまくなじめない」「組織で働くことに適応できない」日常の中でそんな「生きづらさを抱えている方に、ぜひ読んでほしい本がある。『私たちは生きづらさを抱えている 発達障害じゃない人に伝えたい当事者の本音』(姫野 桂:著、五十嵐良雄:監修/イースト・プレス)は、自身も発達障害であるかもしれないと感じている姫野氏が22人の発達障害当事者に取材を行い、リアルな生きづらさを収録したノンフィクション作品だ。

 そもそも発達障害には自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠如・多動性障害(ADHD)、学習障害(LD)の3種類がある。そして、発達障害は程度がグラデーション状になっているため、発達障害ではない人との間に明確な線引きがなく、自分が発達障害であることに気づかないまま、生きづらい日常を送り続けている人も多い。そして発達障害であることを自覚していると、周囲の人と同じように物事を進められない自分に苛立ちや悲しみを感じてしまうことも少なくない。

 だが、どうして生きづらいと感じてしまうのか、同じような思いをしている人がいるのだということを知れたら、生きやすい世界を創るための1歩を踏み出すことができるかもしれない。そこで本稿では、本書内に収録されている貴重な体験談の中から、ひとりの青年のエピソードを詳しくご紹介していきたい。

■障害を美談で終わらせない風潮を

 大阪府在住でASDのユウキさんは高校2年生のときに診断を受け、発達障害による聴覚過敏や過敏性腸症候群、自律神経失調症といった二次障害に苦しめられて高校を中退せざるを得なくなった。その後は、関西の中堅私立大学へ進学し、キャンパスライフを満喫したが、就職時には再び壁にぶつかった。

 当初、ユウキさんはマスコミや広告代理店で働きたいと考えていたが、彼には二次障害のひとつとして独特なバイオリズムがあり、1日10時間の睡眠が必要だった。そのため、睡眠が不規則になる可能性が高い希望職を諦めなければならず、結局大手出版取次へ入社を決めた。

 その会社でユウキさんに与えられたのは毎日、物流センターに届けられる商品に不良品がないかを探したり、ラベルを貼ったりする地道で複雑な工程を繰り返す業務だった。しかし、毎日同じところに行き、机に向かって同じことを繰り返すのが苦手なユウキさんは仕事をしていく中でミスが目立つようになってしまう。そこで悩んだ末、上司に自分の障害を話し、違う部署に異動させてもらったのだそう。

 こうした経験をしたユウキさんはその後転職をし、現在発達障害のある小学校1年生から高校3年生までの子どもが通える支援施設「放課後等デイサービス」で働いている。自身が発達障害当事者であるからこそ、日々「この子はどうしたら生きやすくなるのだろうか」と考え、長期的な視点で子どもたちを見守りながら、発達障害を個性として片づけるだけではない社会になるよう、願ってもいる。

 近年ではSEKAI NO OWARIのFukaseさんや栗原類さんのように、発達障害があることをカミングアウトする芸能人も増えてきているが、彼らが語るエピソードをただの美談で終わらせてはいけない。発達障害当事者の抱えている課題を理解し、適応できる環境を築いていくことこそが、今の日本には必要だ。

 発達障害は目に見えない障害であるため、「少し変わった人」という認識のもとで見られてしまうことも多く、当事者は言いようのない孤独や痛みを抱え続けなくてはならないケースも多い。だが、周囲の人が障害を正しく知ろうと思えれば、お互いが生きやすい優しい世界を少しずつ創っていくこともできるはずだ。

■発達障害の自分だからこそ、できることがある

 発達障害の二次障害により、独特な体のバイオリズムと付き合っているユウキさんは本書の中で自身の学生時代を振り返り、こんな言葉ことを言っている。

特に受験のときなんかは、周りの人が自分より頑張って勉強しているのに、自分は少し勉強しただけで疲れてしまうし、そこから回復するのにも時間がかかる。言葉を選ばずに言うと、「不良品」というか。

 ユウキさんのように、ネガティブな言葉で自分を卑下してしまう発達障害者は多いように感じる。筆者も実際に発達障害を自覚している友人がいるが、その彼も「俺はアスペルガーだから話題がコロコロ変わったり、話し出したら止まらなくなってしまうから、ごめん」と、謝るのが癖になっていた。

 だが、彼は人並み外れた記憶力を持っていたり、気になることはとことん調べたりする努力家な一面も持ち合わせていた。本人は、それもアスペルガーの特徴であるだけだと語っていたが、筆者の目には、その特性がひとつの武器のようにも見えた。現に彼はその後、海外出張も任せられるほど上司からも認められ、バリバリと仕事をこなしている。

 人間は障害の有無にかかわらず、誰にも得手不得手がある。だからこそ、苦手なことよりも得意なことや好きなこと、興味が湧くことを突き詰め、障害とうまく付き合って生きていくのもよいのではないだろうか。生きづらい人生を少しでも生きやすく変えていくには、“発達障害の自分だからできること”を模索していってみてほしい。

 発達障害者の生の声が収録された本書は、同じく発達障害のある方や「発達障害かもしれない…」と悩んでいる人の支えになる。22人が抱えている等身大の生きづらさは、同じく悩んでいる人の背中をそっと押してくれるはずだ。

文=古川諭香