『ONE PIECE』90巻 「最悪の世代」から「海賊王」が誕生!? ついに完結するWCI編と“世界会議”で新たに張り巡らされたナゾ

マンガ

公開日:2018/9/4

『ONE PIECE』(尾田栄一郎/集英社)

 サンジを奪還するべく始まったホールケーキアイランド編。潜入した麦わらの一味とその一行による壮絶な戦いの末に、見事サンジを取り戻し、“ロードポーネグリフ”の写しを手に入れ、懸賞金10億越えのカタクリを倒し、ビッグ・マムの“食いわずらい”を鎮め、一同は再びサニー号に集結した。あとはママが支配する海域から逃げるだけ。

 しかしサニー号を追いかけてきたビッグ・マム海賊団の艦隊の脅威に、ルフィたちは大ピンチを迎えていた。果たして“ワノ国”で待つ仲間の元へ無事に帰れるのか。

 『ONE PIECE』(尾田栄一郎/集英社)90巻で、ついにホールケーキアイランド編が結末を迎え、世界の“うねり”を描く“世界会議”がスタートする。

advertisement

■「最悪の世代」と呼ばれる者達の中から「海賊王」が誕生する

 今にも海に沈められそうなサニー号。砲撃が飛び交う瞬間、彼らを救ったのは、かつて魚人島で敵だったワダツミだった。巨大な手でサニー号を海中へ引きずり込み、自らの口に船を入れてひっそりと艦隊の手から逃れようとしたのだ。

 しかしママの息子たちがそれに気づかないわけがない。4男のオーブンがネツネツの実の能力を使って海中のワダツミを攻撃。「あっっついら~!!!」と叫ぶワダツミの口から船が飛び出してしまった。

 魚人島ではホーディ一味に従うだけのアホで嫌な奴だったワダツミ。しかし麦わらの一味に敗北し、ジンベエに拾われてから彼は改心した。

いけ!!おまいら!!
麦わら!!おいら…!!魚人島れは…イケンことしてごめんらったろ…!!
それも拾ってくれたジンベエ親分に…か…感謝してるら……!!!

 そして、ネツネツの実の攻撃を受け続けるワダツミをかばうように、海面から現れたのは“タイヨウの海賊団”の一味だった。

 麦わらの一味が魚人島を救ったことへの感謝、ジンベエが麦わらの一味に仲間入りした“門出”を祝うためにも、ルフィたちを逃がそうと命懸けで立ち上がったのだ。

 困っている誰かを助けること。受けた恩を返すこと。これらは人の道を生きる上で当たり前の仁義だが、日常生活ではなかなかできる場面がない。その上、下手なやり方をすると「偽善」と言われたり「恩着せがましい」となじられたり、現実では縁遠くなっている。

 しかしこの世界ではそれが当たり前のように、そして私たちが憧れる形で描かれる。本作品を読んで心が動かされる理由がここにあるのかもしれない。

 この後、キャロットがペドロを想って涙を流し、プリンが誰にも知られないよう恋心をそっとひた隠し、カタクリが地面に背をつけなくなった過去がひも解かれたが、それはもう過ぎたことだ。生きている限り、誰もが前に進まなければならない。

 この冒険でルフィたちは、また1つ前へ進んだ。世界経済新聞社の社長・モルガンズが無事に海域を抜けた麦わらの一味の存在を知って、CP0のステューシーにこう予言した。

――ああ麦わらも候補の一人だ……
私はこう思ってるステューシー
近々「最悪の世代」と呼ばれる者達の中から……
「海賊王」が誕生すると!!!

■18年越しに描かれる“世界会議”で張り巡らされた謎

 そして90巻では、物語を大きく進展させる重要な場面が描かれている。“世界会議(レヴェリー)”だ。

 ワンピースで“世界会議”と思わしき発言が初めて出たのが、第15巻、ビビとドルトンによる会話だ。ビビが「王達の会議」と言葉をもらし、ドルトンが困惑したあの場面だ。

 あれから約18年。世界中に散らばるポーネグリフの謎、アラバスタ王国に眠る古代兵器の存在、天竜人と世界政府の誕生、世界中の動乱と各国にはびこる闇。世界中を巻き込むあらゆる謎と闇が、ルフィたちの冒険の横で少しずつ描かれてきた。

 ついに世界50か国の王たちが一堂に会し、“この美しき世界について”、7日間議論されようとしている。とうとうワンピースという物語に隠された秘密が解き明かされるのか。そう期待した。

 しかし本作を読んで読者はきっと頭を悩ますだろう。この世界会議の模様で、さらなる謎が張り巡らされたからだ。

 その中でも最大の謎が、世界最高権力“五老星”が頭を下げ膝をつく“彼”の存在だ。…いや“彼女”なのか? …分からない。

 90巻という大台に乗り、ワンピースはますます盛り上がりを見せている。複雑にからみあう謎と伏線が読者の興奮をかきたてることは間違いない。

 この巻の最終話では、ついにルフィたちがゾロたちの待つ“ワノ国”にたどりつく。早くも新章突入だ。

 読み終えた後、きっとワンピースファンの誰もがこう思うだろう。「早く91巻が出てほしい!」と。この物語の“うねり”は果たしてどこへ向かうのだろうか。

文=いのうえゆきひろ