『ゆにばーす はらの #詐欺メイク』から、なぜ女子は別人になろうとするのか考えてみた

健康・美容

公開日:2018/9/9

『ゆにばーす はらの #詐欺メイク』(ゆにばーず はら/世界文化社)

 門外漢を承知で言うのだが、最近流行りの加工アプリや詐欺メイクで別人になりたい女子が全く理解できない。いや、一応自分も過去に女子であったし、いくら開き直ったスッピン人生を歩んできたといっても、美人願望も分からんではない。が、詐欺メイク&自撮りテクで別人のように可愛くなった自分の写真をインスタに上げる女子たちの行動はやはり謎だ。だって、その可愛い顔はインスタ内限定のモノで、実際の顔はそのまんまなわけだから(当たり前だが)。一体何のためにそんなことをしているのか、誰得なのか。いや、楽しいんだろうけど、何で楽しいのかを『ゆにばーす はらの #詐欺メイク』(ゆにばーず はら/世界文化社)から考えてみた。

 元の素材から、なんちゃって美人風に仕上げる詐欺メイクの技術と自撮りテクは単純に凄い。いやこれ特殊メイクのジャンルだよ。ホラー映画のゾンビメイクとか。

 しかしテク以上に驚かされるのが、そこまでやるかという詐欺メイクへの情熱である。下地を塗って、輪郭を消すためにシェードをつけて、色んな照明の下でポーズを検証してキレイに見える角度を追求して……えーっと、死ぬほど面倒臭くないですか。ここまでやって、詐欺メイクを駆使して出会い系サイトで男を釣っても、実際に会ったら「腹痛がひどくて」と逃げられたって本書で言っているぐらいだから、詐欺メイクにリアルでの実用性はないのである。この日常仕様ではないあたりも、映画やハロウィンの日限定の特殊メイクと似ていると思うわけである。

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 本書でも、ゆにばーすはらちゃんは、桜井日奈子さん完コピの詐欺メイクについて「ただ似ているのは、あくまで写真のフレームの中だけ。現実ははらの顔が見え隠れするので、残念ながら桜井さんの顔で合コンはいけない」と言っている。あくまで二次元限定、写真の中だけのなんちゃって美人(風)に変わるために、どうしてここまで熱意と金と時間を注げるのか。

 スッピン人生半世紀の自分が辿り着いたのは、これは「自分の顔をどれだけコピー元に寄せられるか」というチャレンジみたいなものかなあ、という結論である。チャレンジであるからして本気だし、気合を入れて「寄せ」に成功すれば達成感もあるのかもしれないが、自分としては、ナントカ風の理想顔に「寄せる」行為そのものが、そもそも理解できないのであった。だって、それ、もはや自分の顔じゃなくね? そんなことを言うと、思いきり舌打ちされて、「だ・か・ら~、自分の顔に満足してないから寄せてんだよ!」と言われそうなんですが、寄せたところで、外で対オトコ装備として使えないんでしょ? SNS限定なんでしょ? どう考えても分からんので、周囲の若い女子に聞いてみたところ、「夢ですよ~」とふんわり回答された。「鏡で見て、自分の顔がこんなだったらいいな~って思うじゃないですか~。それですよ~」とのこと。そうですか。夢ですか。SNSに氾濫するナントカ風美人に寄せた加工アプリ顔は女子の夢なのか。詐欺メイクという手間をかけてまで見る女子の夢とは何なんだろうか。詐欺メイクで夢見る女子が、鏡の中の自分のスッピン顔を見ても淡々と現実を受け入れ、「なるほど」と思う日は来るのだろうか。大いなる謎である。

文=ガンガーラ田津美