中国に棲まう、不気味な妖怪たちの跳梁跋扈

小説・エッセイ

公開日:2012/3/24

中国怪奇物語 <妖怪編>

ハード : PC/iPhone/iPad/Android 発売元 : 講談社
ジャンル: 購入元:eBookJapan
著者名:駒田信二 価格:432円

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日本の妖怪。柳腰であろう。
中国の妖怪。毛が生えていそう。
いや、なんかそんな感じがするというだけのことだけど。

この本は、中国に伝わる妖怪譚を、70話弱集めたアンソロジーであるけれど、毛は生えていない。ま、そんなに毛にこだわることもないが。

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お化けと妖怪で言うと、お化けは怖く、妖怪は不気味だ。そのまさに不気味な手触りが満ち満ちている1冊なのである。

私が怖かったのは、「白衣の美女」というたった2ページのお話だ。雪の日に船をこいでいてと岸に立っていた真っ白な着物の女を乗せてやる。「お綺麗ですね」と言葉をかけると、女は「それほどでも」と答えたとたん真白い鷺に変わって飛び立ってしまう。男はそれから寝つき、2、3日で死んでしまう。

これだけの話である。これだけの話だから背筋を何か冷たいものが登ってくる。出来事に因果がないからだ。例えば男が昔鷺を飼っていたとか、鳥を殺したことがあるとか、そんな一行が入っていたら、まるで不気味でない。

ほかにも、有名なところでは芥川龍之介が材をとって短編にした「酒虫」や、谷崎潤一郎もこれで一本書いてる「人面瘡」の話もある。

中国のえりすぐりの妖怪譚をお楽しみください。ぞわっとします。毛があるだけに。


愛玩する人形が命をもつのはどこの国にもある話。ここではちょっとエロチックに展開する

少年が猿に変えられていたことが分かり、しかし物語はもうひとひねりする

これも短くてけっこう恐い話 (C)Setsu Komada 1983