年俸5倍より海外移籍を選んだ、吉田麻也が自伝で明かす「決断力」と「負けない力」――“夢がない”と揶揄される若者たちは何を思ったのか?

スポーツ

2018/9/13

『吉田麻也 レジリエンス――負けない力』(吉田麻也/ハーパーコリンズ・ジャパン)

「肉離れしてでも、骨が折れてでも、何でもいいからとにかく間に合ってくれ」。そう願ってスライディングをした昌子源選手の左足はわずかに届かず、ベルギーのシュートがゴールに突き刺さる。日本のW杯ベスト8の夢を打ち砕いた、ベルギーの高速カウンターで、「届かなかった50センチ」は“日本と世界との差”だと言われた。

 世界の第一線で活躍するプロサッカー選手たちは、そんな小さな差を埋めるため、日々の練習と試合に全力で臨み、自分の限界に挑み続けている。今回のW杯で主力として活躍した日本代表DF・吉田麻也選手もそのひとりだ。

わずかの差。あと少しの差。一歩とか、半歩の距離を詰められるように、自分のレベルを上げるしかない。その差をどこまで詰めることができるか。結局は、そこに尽きる。

 これは彼の自叙伝『吉田麻也 レジリエンス――負けない力』(吉田麻也/ハーパーコリンズ・ジャパン)にある言葉だ。本書を読むと、吉田麻也が世界のサッカーの最高峰・プレミアリーグで結果を出し続けられる理由が分かってくる。

 弱冠12歳で親元を離れ、名古屋グランパスのジュニアユースに入団。その頃から持っていた、片田舎のサッカー少年チーム出身というコンプレックスと、「こいつらには絶対負けたくない」という反発力。年俸400%アップのプランを提示されるも、それを拒んで決意したオランダ移籍。「エイリアン(宇宙人)」と思えるほどの異次元なプレーを見せる、スター選手と戦うプレミアリーグの日々…。

 決してエリートではない。チームでは進んで“いじられ役”に徹する明るさとユーモアも持っている。しかし吉田麻也は常に熱い気持ちを秘め、「レジリエンス(負けない力)」を武器に、決断と努力を重ねることで世界最高峰のリーグまで辿り着いた。そんな男の生き方は、プロサッカー選手を夢見る子供達にも勇気を与えるものだろう。

 実際、本書の発売後に行われた感想文キャンペーンでは、熱い感想が数多く見られた。その一部を紹介しよう。実名で登場しているのは、吉田麻也の出身である名古屋グランパスU-18の高校生だ。

「誰でも転ぶことはある。でも立ち直り方は“人それぞれ違う”。この本を読んで、たくさんの『夢をかなえるために必要な力』を知ることができた」(高2男子)

「自分以外にベクトルを向けるのはとても簡単なことだが、そうしているうちは成長できない。壁にぶつかった時、この本を思い出して、前向きにやっていこうと思った」(高3男子)

「“いつまで続けるのか”ではなく“どのレベルまでいけるのか”、“そこで何を成し遂げるのか”に重きを置くようになったというキャリアに関する価値観がこの本の中で一番印象に残っていて何回か読み直した」(MF・手嶋秀)

「吉田麻也選手は周りのエリート選手に『負けてたまるか』という気持ちが常にあり、僕もそういう気持ちの部分では絶対に負けない」(DF・平井慎太郎)

 このような熱い感想を読むと、巷で言われる「最近の若いコたちは冷めている」「大きな夢を持たずにつつましやかな生き方を望んでいる」という若者観は果たして本当なのだろうか?と思えてくる。

 確かに不安定な時代を生きる若者たちは、より安全に生きるために冷静な視点を持っているのかもしれない。しかし、胸の内には誰もが熱い想いを秘めている。そして、吉田麻也のようなロールモデルとなる大人の生き方に触れたとき、彼らは勇気を振り絞り、夢への第一歩を踏み出すのだ。

 吉田麻也が本書で挙げた「レジリエンス(負けない力)」の構成要素の中には、「選択力」「英語力」「アジャスト力」「リスペクト力」といった、グローバル社会を生き抜くための知恵と技術が多く含まれている。

 社会の先行きの不安ばかりが叫ばれる日本だが、吉田麻也のように努力を重ね、勇気をもって世界へ踏み出せば、そこには前人未到でケタ違いの成功への可能性も開かれているのだ。『吉田麻也 レジリエンス――負けない力』は、今の時代の若者たちが夢を描き、それを実現するための大きな後押しとなるだろう。

文=古澤誠一郎