“仕事の壁”にぶつかっているなら。現役医師が描く「リハビリ病院」が舞台の医療小説続編に考えさせられた!

文芸・カルチャー

2018/9/12

『ナースコール! 戦う蓮田市リハビリ病院の涙と夜明け』(川上途行/ポプラ社)

 リハビリ病院を舞台にした『ナースコール! 戦う蓮田市リハビリ病院の涙と夜明け』(川上途行/ポプラ社)の最新刊が、いよいよ発売された。

 現役医師が描く、ちょっとマイナーな「リハビリ」をテーマにした本作。

 前作のレビュー(//ddnavi.com/news/391055/a/)の時、「リハビリに興味がない人は、あんまり楽しく読めないんじゃないかと思ったけど、全然そんなことなかった!」といったような感想を書いたのだが、今回はより「全然そんなことなかった」。前作よりもバージョンアップして「面白かった」のだ。

 医療人に限らず、誰しも、「仕事の壁」にぶち当たる時がある。

 その壁に悩み、もがきながらも、前に進む本作の登場人物たちの姿は、業界や職種を問わず、多くの読者を感動させるのではないだろうか。

 主人公の玲子(れいこ)は、蓮田市リハビリテーション病院に勤務する看護師。以前は仕事に対して、やる気を持てずにいたが、医師の小塚(こづか)やチームの仲間、入院患者との交流により、失いかけた情熱を取り戻していた。

 ある日、作業療法士の主任として大迫まひろという女性が赴任してくる。玲子の病院が「リハビリ病院の中で『一番』」だと聞いて転院して来たという、完璧&実力主義、妥協を許さない厳格な療法士だった。

 チーム全体で、患者さんにとって最良のリハビリを目指す玲子は、個人主義なまひろのやり方に、反発を覚える。しかし、自分の中にも迷いがあった。まひろは高い技術と知識で、自分のベストを尽くし、時に和を乱すことはあっても、確実に成果を出している。一方で、チームとして動くことで生じる妥協や甘さ、人間関係のしがらみに縛れてしまうことは、医療現場においてマイナスになるのではないだろうかと、玲子は悩む。

 そんな時、玲子とまひろたちのもとに、余命の少ない中年男性の患者がやって来る。病気が治る見込みがなくとも、「娘の結婚式に出て、バージンロードを歩きたい」という、その男性の願いを叶えるため、玲子たちは一丸となってリハビリにあたる。その過程で、玲子やまひろ、そして小塚に、様々な「気づき」と「変化」が生まれ……。

 今作は、前作よりもリアリティを感じた。私は医療関係者ではないし、リハビリ病院には行ったこともないはずなのに、本当にその場にいて、現場で働いているような感覚になった。本当のお医者さんが書いている小説だから、描写に現実感があるのは当然なのかもしれないが、それだけではなく、玲子や小塚の心の動きに、感情移入しながら読むことができたのだ。「仕事の正解って何だろう?」と、考えさせられた。

 自分のやり方を貫き通すには、その分、自分に力がないといけない。だけど、自分の実力を直視することに怖さを感じる玲子に対し、完璧主義者のまひろにも、迷いが生じる。「自分は、自分の技術をひけらかすために、情けない自尊心を満たすために、リハビリをやっていたのではないか」と。

 本作で、登場人物たちが思い悩んだことは、「仕事に本気で向き合ったことのある人」なら、誰しもぶち当たる壁ではないだろうか。集団の中で働くことの難しさ。チームワーク、個人の技術、リーダーの責任、職場の文化や伝統。自分のやり方は正しいのか。他者から正しく評価されているのか。本当に社会の役に立っているのだろうか。全部、独り善がりではないか。

 ……働いていれば、考えることは、色々ある。

 そういった仕事に対する向き合い方を、本作はリハビリ病院を舞台に描いている。だから、誰が読んでも「面白い」のだ。仕事に対して、真剣になればなるほど迷うこともあるが、本作の登場人物たちは、その「正解」ではなく、「決断」を見せてくれたようで、すごく励まされた。

 個人的に、玲子とクールな小塚先生の恋愛模様も淡く進展しており、そちらの方もかなり気になっている。続編もあるのだろうか。期待しながら待ちたい。

文=雨野裾

共感の声続出! 現役医師が描く「リハビリテーション病院」が舞台の医療小説が登場!