勉強ができる子の共通点って? 脳医学者が教える、 一生モノの「賢い脳」を手に入れる方法

出産・子育て

公開日:2018/9/18

『「賢い子」は図鑑で育てる』(瀧靖之/講談社)

 子どもが小さいうちは、何の教材を与え、どんな習い事をさせたらいいのかと迷い、大きくなってからは子どもの勉強嫌いという壁にぶつかり…。うちの子、勉強ができる子と何が違うの? と悩む親は多いかもしれません。

『「賢い子」は図鑑で育てる』(瀧靖之/講談社)では、5歳から80代まで16万人もの脳画像を見てきたという脳医学者が、賢い子を育てるための“育脳”ツールとして「図鑑」を活用することをすすめています。これまでの膨大なデータを解析することによって、人間の脳の「賢さ」がどう築き上げられ、維持されるのかが明らかになってきたといいますが…。

■勉強ができる子に共通する「好奇心」と「学び=楽しい!」

 本書によると、勉強ができる子は好奇心旺盛で「学び=楽しい!」と感じられる脳を持っているそうです。子どもって、楽しくて興味のあることはすぐに覚えてしまいますよね。たとえば、大好きな「おしり」や「仮面ライダー」の知識は豊富だったりします。大人だって、子どもの頃にテストで出た歴代アメリカ大統領の名前は覚えていないけど、遊びで覚えた恐竜やアニメのキャラクターの名前は今でも覚えているものです。

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 子どもの学びは、遊びと結びつけることが大切だとよく言われますが、これは脳医学的にも証明できるといいます。脳の中で、好き嫌いを判断する扁桃体(へんとうたい)と、短期記憶を長期記憶に変える海馬(かいば)は密な関係にあって、「楽しい」という感情が伴うと、記憶は圧倒的に定着しやすいそうです。好奇心をもって楽しく学んだことは、忘れないということですね。

■図鑑を最初のページから読むのはNG!?

 そして、この好奇心と「学び=楽しい!」という脳を育てるきっかけになるのが図鑑だと、本書では提案しています。ただし、やってはならないのは、図鑑を最初から読み、すべてを理解しようとすること。図鑑は分厚くて、比較的文字も多いし、全部読もうと思ったら大人でも挫折するかもしれません。

 本書がすすめる図鑑の活用法は、気になったところから読み始めること。また、図鑑は動物、植物、宇宙、車、恐竜などなど、あらゆるジャンルが揃っているので、どんな子どもでも1つは気になるものがあるといいます。たとえば、虫が好きなお子さんなら、「あれ?  ダンゴムシみたいな虫なのに、なんで丸まらないの?」といった疑問から、どんどん他のページにも興味が広がっていくそうです。「おしり」だって人体図鑑に出てきますし、「仮面ライダー」には乗り物や宇宙といった森羅万象に結びつけられる何らかの要素が必ず入っています。この興味とともに知識が広がる感覚は、まさに学びです。図鑑は学びの基礎を楽しく学べるツールなのです。

■「賢い脳」がどんどん育つカラクリは…?

 また、著者によると、子どもが疑問に思ったことを図鑑で調べたときに「わかった!」という成功体験をすると、脳に快感がもたらされるそうです。この成功体験が重なっていくと、「楽しい」を伴った知識は着実に記憶に刻み込まれ、どんどん賢い脳が育っていく、というカラクリ。図鑑を開くことが習慣になった頃には「学び=楽しい!」という脳はしっかりとできあがり、親が言わなくても自ら楽しく勉強してくれるようになっているはず。そうなれば、育脳の土台づくりは大成功だといえそうです。

 大事なのは、図鑑好きにするためのきっかけを、親が与えてあげることだと本書では語っています。そのためには、リビングなど子どもがすぐに手に取れる場所に図鑑を置き、「ダイオウイカの目ってどれぐらいの大きさなのかな」など、子どもの気持ちを代弁し、親も楽しみながらサポートすることが有効。多忙ならば、夜、布団に入ってからの3分、5分でもいいのだと、著者は自らの経験から語っています。

■「学び続ける」科学的な戦略で幸せな人生を!

 著者は本書の中で、人生100年時代を生きる子どもたちが幸せな一生を手に入れるために必要なのは、加速度的に進化する社会に振り落とされないように「学び続ける」という姿勢であり、幸せという漠然としたものをつかむために、科学的に育脳の戦略を練ることだと語っています。

 育脳を始めるのは未就学児がもっとも適しているそうですが、高校生や大人になってからでも遅くはないとか。ただし、脳には分野によって、その能力を高めるのに適した時期があるといい、年齢別のオススメ図鑑と活用法も本書では紹介されています。その他にも、思考力やコミュ力、壁を乗り越える力など、図鑑を通して得られる力は、想像以上。未来を生きる子どもたちの脳を鍛えるツールが、アナログな図鑑だとは、驚きです。一生モノの「賢い脳」を手に入れるために、今こそ図鑑でお子さんの“やる気スイッチ”を探してみませんか?

文=吉田有希