アレルギー、疲れ、肥満、鬱…。その原因は「キレイ好き」だった!?

健康・美容

公開日:2018/9/16

『すべての不調をなくしたければ除菌はやめなさい』(ジョシュ・アックス:著、藤田紘一郎:監訳/文響社)

 私たち人間の寿命が延びたのは、食の多様化、そして衛生環境の向上によるところもかなり大きいと言われている。しかし、昔では考えられないほど清潔な都市に暮らす現代人がとても健康なのかと問われると、一概にそうとも言えないようだ。

 花粉症などをはじめとする諸々のアレルギー、慢性的な疲れ、肥満、免疫低下、鬱…。食物過敏症を持つ子どもも増えたと言われている。これら現代人を象徴するような不健康のほとんどは、薬では根本的には治らないと感じている人も多いことだろう。

「そんな不調の原因はすべて『キレイ好き』にある」と断言する衝撃の書籍『すべての不調をなくしたければ除菌はやめなさい』(ジョシュ・アックス:著、藤田紘一郎:監訳/文響社)を本稿ではご紹介していきたい。

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■腸に棲む微生物は、免疫システムの番人

 マイクロバイオームとは、人体内外に棲むすべての微生物(バクテリア、ウイルス、真菌、酵母、パラサイト…などなど)のことを指す。私たちは自分のことを、こういった菌類の「宿主」だと考えがちだ。しかし実際には、人体に棲むバクテリアの数は人間の細胞の10倍もあり、その多くが棲息する腸には100兆個ものそれらが存在しているというから驚きだ。

 腸内の微生物は体の機能をつかさどる上で重要な役割を果たしている。その中でも最も大切なのは、私たちの免疫システムを作り上げ、育て、腸の内膜を完全な状態のまま維持するということだと著者は説いている。いわば、私たち人間はこうした微生物たちと共生関係にあるのだ。

■土着民族と、アメリカ人の腸内環境

 アマゾンの山間部の奥地に居住する最後の土着民族のひとつであるヤノマミ族は、加工食品を食べたことがなく、抗生物質も摂らず、手洗い用の消毒液のボトルさえ見たことがないという。栄養満点の3度の食事を摂らない代わりに、魚、シカなどの野生の獲物の肉、さまざまな昆虫、そして土壌にある微生物に覆われた多くの根菜などを食べているそうだ。

 科学者の調査によると、ヤノマミ族の体に棲むマイクロバイオームの多様性は平均的なアメリカ人よりも40パーセント以上高く、その数値はヒトグループの中でも最高水準だとされている。対照的に、アメリカ人の消化管はまるで不毛の砂漠のようで、基本的な細菌類のうちの主要ないくつかが失われているのだという。

 炭水化物の代謝を助けるもの、活発に免疫システムと連携するもの、腎臓結石の形成を防ぐ働きをするもの…。これらの細菌の消失こそが、先進諸国に暮らす“現代人”のかかる病気の根底にあるのだという。

どうしてこんな状況に陥ってしまったのだろうか? 大きな原因の一つは抗生物質の常用だ。それと同時に、あらゆるものに含まれる抗菌剤にさらされていることもある。

 健康志向により、世の中のすべてを衛生的にしようとした私たちは、健康に良いバクテリアまでも除去してしまったというのだ。そうして免疫システムのバランスが崩れ、皮肉なことに私たちは新しい「不健康」に悩まされている。

「土を食べろ」という衝撃の原題でアメリカを賑わしたベストセラーの邦訳版である本書には、この「除菌された社会」の中で生きる私たちがどうやって良い微生物を摂取していくのかという問いの答えが詳細まで詰め込まれている。

 私たちは、自分の腸に有毒レベルの加工食品や砂糖を流し込み、化学物質や過剰な抗菌剤でさらなる負担を与えてきた一方、本当の栄養を与えずにきてしまったのかもしれない。自身や家族の健康に気を遣うあまり、敏感になってしまう人にぜひ読んでもらいたい1冊だ。

文=K(稲)