1本600円の高級バナナが飛ぶように売れている!? 奇跡のバナナが世界を救う!

社会

2018/9/16

『奇跡のバナナ』(田中節三/学研プラス)

 1本600円のバナナをあなたは買うだろうか? その高額バナナが飛ぶように売れているというから驚きだ。日本に輸入されるバナナは、青いうちに収穫され、薬で殺菌される。寄生虫の日本への侵入を防ぐためだ。もし、樹上で完熟した無農薬バナナがあれば、より甘くおいしく、より安全なものとなる。それが、『奇跡のバナナ』(学研プラス)の著者・田中節三氏が生産している「もんげーバナナ」だ。「もんげー」とは岡山弁で、「すごい」を意味する。

 では、なぜ、もんげーで、奇跡なのか? それは、本来、熱帯地方でしか実らないバナナを岡山県で露地栽培しているからだ。そして生物学の常識を覆す「凍結解凍覚醒法」という著者独自の栽培法を編み出したからだ。田中氏は、本書でその秘密を惜しげもなく公開しているので紹介したい。

■氷河期の記憶を呼び覚ます技術!?

 バナナは、どうやって1万3000年前の氷河期を乗り越えたのか。田中氏はこう考えた。「氷河期以前に、近縁種がすでにあり、それが氷の中で凍結され、生き延びた」と。つまり、それまで凍っていたバナナが氷河期を過ぎて蘇生し、さらには、熱帯の暑さに順応していったと思ったのだ。「植物の中には、氷河から甦った力が眠っている」。その直感から生まれたのが「凍結解凍覚醒法」だ。

 具体的には、バナナの成長点の細胞をマイナス60度まで凍らせて、常温に戻す作業を行う。ただし、急速冷凍させると死んでしまうので、1日に0.5度ずつ温度を下げ、180日かけてゆっくりと凍らせる。もちろん、そういう冷蔵庫は存在しないので、まずは、冷蔵庫造りからの挑戦だった。

 マイナス60度になれば、細胞はもちろん、核内のDNA以外のものはすべて壊れてしまう。そして、そこから蘇生すると、寒さに強いバナナに変身しているという理屈だ。寒さを克服した細胞は、成長速度が速くなる、免疫力が強化するなどの別の能力も開花した。

 生物学的には、それまで眠っていたDNAが使われたと田中氏は、考えている。実際、タカラバイオ株式会社との共同研究で、それを裏付けるデータも出てきている。現在、論文を準備中ということだが、認められればノーベル賞級の発見に違いない。

■シベリアを田畑に変えるプロジェクト

 この農法で栽培できるのは、バナナだけではない。現在、パパイア、マンゴー、コーヒー、胡椒などの植物で成功している。さらに、小麦、大豆、トウモロコシなども実験中で、成功すれば、シベリアでの栽培も可能となる。広大なシベリアを畑にできれば、世界中の需要を賄えるようになるという。全国の農業高校から、講演や農場見学の依頼が増え、若い世代がこの農法に興味を持ち始めた。これなら、農業も儲かると思ったようだ。2018年、田中氏は12万株のバナナを植え、売り上げ目標は、約50億円だという。

 この奇跡のバナナが世界を変える日も近いといえそうだ。

文=今眞人